第3の疑問は、「次のような消費者がいるから実効性に疑問がある」というものです。[1]燃料携行缶を持参して余分に燃料を注いで帰る消費者が出る、[2]自動車メーカーの実燃費公表値を下回るような荒い運転を行って差額分をかすめ取ろうと考える消費者が出る──などです。

 私は自動車メーカーや企業人に対しては徹底的な「性悪説」で臨みますが、一般国民に対しては基本的に「性善説」に立つので、事前にあまりこういうことを考えません。自動車メーカーに限らず、メーカーは競争の世界で生きているため、基本的に「利己主義」です。そのため、「隙あらば」と不正を考えることは“必然”です。自動車メーカーは今後も必ずディフィートデバイスや不正申請や実燃費乖離問題を発生させます。従って、鉄壁の不正防止策を考えなければなりません。これに対し、一般の消費者は利害関係がないので基本的に善良な市民です。しかし、中には不正を考える人もいるでしょうから、一応「消費者不正の防止」も考えてみましょう。

[1]の燃料携行缶に関する疑問について
 消費者が燃費を測定する方法は、満タン法で3000㎞走行した時点とします。燃料携行缶は最大20Lです。500km走行ごとに燃料を注ぐときに20Lの燃料を余分に持ち帰ると仮定すると、20L×6回=120L(約1.5万円分)。この分を自動車メーカーに書類申請し、審査を受けて補償費をかすめ取ろうと考える消費者がいたとします。ところが、こうしたケースは「実際の実燃費」よりも約30%も悪化するので、自動車メーカーの厳正な当該車審査も含む審査により、すぐにばれます。

 では10Lの燃料携行缶では? 5Lの燃料携行缶では? 3Lの燃料携行缶では?…。もはや考える気になりませんが、不安なら、不正者に対して罰金50万円を科すことも立法時の付帯法律にしたらよいでしょう。

 ところで、燃料携行缶で燃料を持ち帰ってどのように処分するのでしょうか? 自分のクルマに入れたら意味がありません。他の人に提供したら、ばれるリスクが急速に高まります。自分の2台目の自動車に注油するとしたら、2台目のクルマを持つ(裕福な)人がそんな面倒なことや、罰金刑のリスクを抱えてまで「3か月で1.5万円分」をかすめ取ろうとはしないでしょう。こうした議論を好む人がいるので、付き合ったらきりがありません。こうした不毛な議論は実行前にしないようにしましょう。前にも言ったように、こんな話は「ちょっと考えたらどうにでもなる」のです。

[2]の荒い運転を行う消費者に関する疑問について
 消費者が実燃費の補償費をかすめ取るために、ドライブや通勤や買い物のときに(オートバイの暴走族のように)エンジンを空ぶかしし、急加減速を繰り返して高速高回転させながら爆走するようになる、という話です。消費者が常に暴走族になりたがっていることを前提にした話ですが、そういうばかな消費者がこの世にいるわけがないでしょう。そうやって手にいれた“補償費”は、結局自分が余分に消費した燃料代に消えるだけでお釣りも来ないから何の得にもなりません。暴走運転の精神的肉体的疲労と警察に捕まるリスクと汚い排出ガスを人類の宝である空気中にばらまく量を増やすだけであり、この話は終わりです。

 なお、自動車メーカーが自ら持つビッグデータを基に実燃費を計算する際には、「平均実燃費」と「-2σ(マイナス2シグマ、片側-46%点)の最悪実燃費」、およびそれぞれに北海道、長野県、沖縄などの「地域別実燃費」を公表することになるでしょう。そして「消費者の実燃費が最悪実燃費を割ったら平均実燃費との差額分を補償する」という内容になると思います。消費者が住んでいる地域別に燃費が変動するのは仕方がないので、それぞれに「地域別実燃費」を設けることにもなるでしょう。

 カタログ燃費が20㎞/Lとして、平均実燃費が15㎞/L、-2σ実燃費は12㎞/Lぐらいでしょうか。自動車メーカーが+2σ以上の実燃費を出した消費者に奨励金を出す「最良実燃費表彰制度」を設けるのもよいことです。自動車メーカーは「わが社のクルマのユーザーはこんなに良い実燃費を実現しています」と宣伝に使えばいいし、地球環境保全にも効果てきめんでしょう。私などは、事後1秒ぐらいで効き始める「フィードバック式自動アイドリングストップ」を使わずに、事前に周辺の情報を目や耳で感知しながら早めにイグニッションキーを手動でON/OFFする「フィードフォワード式手動アイドリングストップ」を採用しているので、すぐに最良実燃費実現者として表彰されることでしょう。

 私の前回の投稿に対して1件コメントが入っています(6月3日時点)。「やっとユーザーが満足できる記事が掲載されましたね」と。この人はかつて自動車メーカーに勤めていてこの領域に詳しく、そしていまは「世のため人のため」をしようと考えている人のような気がします。私が現在の仕事とは関係ないこの領域で投稿をしているのも同じ気持ちですが、加えて若干の罪滅ぼしの意識もあります。

 それにしては「いいね!」が少ないのは寂しいです。もっとどんどん「いいね!」して、日本全国に拡散してください。日本人もロジカルシンキング民族になって、カタログ燃費と実燃費の解消活動に取り組みましょう。