國井技術士設計事務所所長の國井良昌氏
國井技術士設計事務所所長の國井良昌氏
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 欧米企業が設計に革新性を見せ、新興国企業はコストパフォーマンスの高い設計で急成長を遂げている。こうした中、「設計にうまく特徴を打ち出せていないと感じる日本企業が増えている」と、國井技術士設計事務所所長の國井良昌氏は言う。日本企業の設計の力を引き上げるには、設計マネジメントを担当する管理者のスキルを高める必要がある。「技術者塾」で「國井設計塾 世界で戦える設計マネージャー養成講座」の講座を持つ國井氏に、日本企業の設計力に関する現状の課題や、設計管理者に必要な条件を聞いた。(聞き手は近岡 裕)

──國井先生はいつも本音で語ってくれるので、聞きにくいことも聞ける、記者としては大変ありがたい取材対象です。とうわけで、今回も「ど真ん中にストレート」的な質問から。ズバリ、日本企業の設計力は高いのですか?

國井氏:日本の「ものづくり」は今なお世界的に高い評価を得ていると思います。でも、ものづくりという言葉を聞いて多くの人がイメージするのは、生産現場や技術の伝承といったものではないでしょうか。設計という言葉は出てこない。
 反発はあるでしょうし、厳しい見方かもしれませんが、この際、私が感じていることをはっきりと言いましょう。日本は生産技術に関しては総合力で世界一です。しかし、企画と設計に関しては先進国の中で下位でしょう。ほんとは「どん尻」と言いたいところですが…。

──そんなに…。

國井氏:先日、私が得た情報では、米国で開催されたある展示会で米国や韓国企業の構えるブースに来場者が殺到する一方で、素通り状態の日本企業のブースもあったとのこと。よく考えてみると、スマートフォンもスマートウオッチもヘッドマウントディスプレーも、話題になる製品は海外企業製のものが多いではありませんか。 最近、世界をリードするような製品が、日本企業からあまり出てこなくなっていると思いませんか。

 電気製品ばかりではありません。クルマもそう。エンジン車では欧米企業がスタイリッシュな製品を出して話題になる。米国は電気自動車や、ICTを活用した自動運転車で世界の注目を集めている。日本勢もハイブリッド車(HEV)を設計して頑張ってはいますが、欧州では今でもHEVはあまり評価されていない。

 F1のようなレース用車両では、エンジンの設計以上にボディー設計が難しいと言われます。そこで専門業者であるカロッツェリアのような場所にみんなが集まり、構想図を映し出した画面を見て議論するのですが、日本人の設計者はその議論の輪になかなか加われないと聞きます。外国人の設計者が言うには「日本人は発想力と主張力に乏しい」とのこと。悔しいですが、これが実態です。