日本の製造業は品質を重視する経営で高いグローバル競争力を実現してきた。こうした日本の品質関連の取り組みを支援してきたのが「デミング賞」で知られる日本科学技術連盟(以下、日科技連)だ。企業・組織が品質に関する事例発表を行う日科技連主催の「クオリティフォーラム」(2016年11月21、22日)に先立ち、日経テクノロジーオンラインはセッションの登壇者などへのインタビュー記事を連載する。今回は「トヨタ自動車TQMの『伝承と変革』」に登壇するトヨタ自動車の業務品質改善部部長の鈴木浩佳氏のインタビュー(下)をお届けする。(聞き手は山崎良兵、中山力、吉田勝)

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鈴木浩佳 氏(すずき ひろすみ)
鈴木浩佳 氏(すずき ひろすみ)
トヨタ自動車 業務品質改善部 部長。1986年、東京大学農学部卒業。同年トヨタ自動車株式会社入社。生産関係の設備やITシステムの開発・導入に従事。2011年TQM推進部にて自工程完結を推進。2014年BR品質改革室にて再発防止等を推進。2016年TQM推進部とBR品質改革室が統合して発足した業務品質改善部の部長に就任。

──トヨタ自動車は業務品質の改善につながるさまざまな取り組みを日本国内だけではなく、グローバルでも展開しているのでしょうか。

鈴木:グローバル展開はまだ十分とは言えない状況です。QCサークル活動などのグローバル展開はかなり進んでいますが、自工程完結やトヨタ流マネジメントはまだまだこれからです。統計的な科学的アプローチも同様です。

 グローバル展開ではキーマンの育成が極めて重要です。また地域の状況に合わせての展開も必要です。

 ただし、展開にあたってWHAT(何)やWHY(なぜ)の部分は変えてはいません。HOW、たとえば言葉での伝え方や導入の仕方は柔軟に変えていっています。このように、思いにこだわって伝承し続けてきたことがトヨタの強みにつながっていると感じています。