戦後、日本の製造業は品質を重視する経営を推進し、高いグローバル競争力を実現して飛躍してきた。こうした日本の品質関連の取り組みを支えてきたのが「デミング賞」で知られる日本科学技術連盟(以下、日科技連)だ。日科技連では、全国の企業・組織が“クオリティ”に関する事例を発表する「クオリティフォーラム2017(品質経営総合大会)」(2017年11月14日~15日)を開催する。日経テクノロジーオンラインは、同フォーラムの開催に先立ち、登壇者のインタビュー記事を連載する。今回はコマツ執行役員スマートコンストラクション推進本部長の四家千佳史氏のインタビューをお届けする。(聞き手は伊藤公一=ジャーナリスト)
――スマートコンストラクションはIoTの成功例としてしばしば引き合いに出されますが、ご自身はIoTをどう定義していますか。
四家:私どもは「結果IoTだ」と言っています。その心は、初めにIoTがあって、それで何かをしたり、ビジネスにつなげたりするものではないということです。実際、スマートコンストラクションという考え方を唱えて運用したら、「これって、ひょっとしたら世に言うIoTだよね」などと社内で確かめ合っていました。いわば後付けです。要するに、目的を達成するために取り組んだ手段がたまたまIoTだった。従って「結果IoT」だという理屈です。
実は私は今でこそコマツの人間ですが、以前は、機械の見える化を目指す「KOMTRAX」の初期の開発に関与していた外部の人間です。建機のレンタル会社を立ち上げていた関係で、KOMTRAXの開発、実証実験に協力し、その関係でさまざまな会議などにも立ち合っていました。1998年ごろのことです。
――KOMTRAXのような考え方は当時、すんなり受け入れられたのでしょうか。
四家:今だから明かせるのですが、KOMTRAXが目指した双方向コミュニケーションシステムを懐疑的に捉える人は珍しくなかったですね。その時に交わした言葉は今も鮮明に覚えています。首をかしげる開発陣に対して「コマツの製品がお客様の生産活動に使われている以上、双方向コミュニケーションは大きなビジネスをもたらすし、お客様の価値観も変わるはずだ」と言ったのですが、理解はされませんでした。
会議同席者の何人に理解されたかは分かりませんが「双方向でつなぐことそのものはビジネスに直結しないかもしれないが、つなぐ基盤を作っておけば、どこかでいろいろなものがコマツにもお客様にも新たな価値をもたらすはずだ」と熱弁をふるっていました。