日本の製造業は品質を重視する経営で高いグローバル競争力を実現してきた。こうした日本の品質関連の取り組みを支援してきたのが「デミング賞」で知られる日本科学技術連盟(以下、日科技連)だ。企業・組織が品質に関する事例発表を行う日科技連主催の「クオリティフォーラム」(2016年11月21、22日)に先立ち、日経テクノロジーオンラインはセッションの登壇者などへのインタビュー記事を連載する。今回は、マツダの執行役員で「企業理念・ウェイの浸透、展開」に登壇する営業領域総括、ブランド推進・ グローバルマーケティング・カスタマーサービス担当の青山裕大氏のインタビュー(上)をお届けする。(聞き手は山崎良兵)
──マツダのブランド力は過去5~6年で大幅に向上した印象があります。クルマ自体の評価も高まっているようですが、ブランド戦略ではどのような工夫をされてきたのでしょうか。
青山 2008年秋のリーマンショックに端を発する未曽有の危機に直面する一方、燃費やトルクなど走行性能を大幅に改善できる「SKYACTIV(スカイアクティブ)TECHNOLOGY」という新技術と「魂動」という新デザインテーマで全てを一新したクルマを出す。これらの取り組みを同時に進めてきました。
当時、米Ford Motor社は保有していた33.4%のマツダ株式の大半を売却することを決めました。独立した自動車メーカーとして、マツダはどのようにして将来を切り開くのかを改めて考えることが求められていました。
スカイアクティブという新しい技術を使って、自動車業界でどのようなブランドでありたいのかを熱心に社内で議論しました。その結果、「マツダ車を通じて人生を豊かにし、カーライフを通じて人生を輝かせる商品を人々に提供する」という方向性が定まりました。
そのために開発も製造も営業も何をすべきなのかを考えた上で、「単なる高性能で走りの優れた車だけでなく、人生を豊かにするクルマ造り、人ともっと深い絆を築きあげられるようなクルマ造りをしていきたい」というビジョンが生まれたのです。