三浦 今は音楽イベントをやっている程度です。ただ、世の中には「歴史のある宮造りの銭湯」の保存活動をしている建築家がいたり、東京大学のイノベーション教育でも銭湯をテーマにしている人がいたりします。いずれの活動も最終的に銭湯経営者の高齢化や、後継者問題による事業継承という課題にぶち当たるんです。

 実は昨年の夏には、フィンランドのアールト大学の研究者から「日本の銭湯について、インタビューさせてほしい」という話が僕のところにありました。

瀬川 秀樹(せがわ・ひでき)<br>クリエイブル 代表、元リコー研究開発本部・未来技術総合研究センター所長。大阪大学工学部精密工学科卒業後、32年半、リコーに勤めた。光ディスクの技術者、 光ディスク国際標準化委員会の日本代表団メンバーなどを経て、米国シリコンバレーに5年半駐在した。同地では、ベンチャーへの直接投資(CVC)や、新規事業の提案/立上/撤退に従事。その後、リコーで技術戦略室長、新規事業開発センター副所長、未来技術総合研究センター所長などを歴任。近年はインド農村部でのBOPプロジェクトも興しリーダーを務めた。 2014年9月に退職、同年10月に「<a href="http://creable2014.wix.com/creable" target="_blank">Creable(クリエイブル)</a>」を設立し新規事業開発コンサルや若手育成研修などを行っている。また、「<a href="http://d.hatena.ne.jp/segawabiki/" target="_blank">勢川びき</a>」のペンネームで4コママンガ作家としても活動中。(写真:稲垣 純也)
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瀬川 秀樹(せがわ・ひでき)
クリエイブル 代表、元リコー研究開発本部・未来技術総合研究センター所長。大阪大学工学部精密工学科卒業後、32年半、リコーに勤めた。光ディスクの技術者、 光ディスク国際標準化委員会の日本代表団メンバーなどを経て、米国シリコンバレーに5年半駐在した。同地では、ベンチャーへの直接投資(CVC)や、新規事業の提案/立上/撤退に従事。その後、リコーで技術戦略室長、新規事業開発センター副所長、未来技術総合研究センター所長などを歴任。近年はインド農村部でのBOPプロジェクトも興しリーダーを務めた。 2014年9月に退職、同年10月に「Creable(クリエイブル)」を設立し新規事業開発コンサルや若手育成研修などを行っている。また、「勢川びき」のペンネームで4コママンガ作家としても活動中。(写真:稲垣 純也)

瀬川 フィンランド? どこで知ったんだ。

三浦 フィンランドに留学していている僕の友人の伝手でした。フィンランドにも「パブリック・サウナ」があるらしいんですけど、日本と同じように機能を家が持つようになって衰退していました。でも、それが今、再び増えているというんです。

 背景には、日本と同じように都市化によるコミュニティーの分断をつなぎ直そう揺り戻しの動きがあります。若者がパブリック・サウナをアート活動に使ったりして、結構人が集まるようになっているそうです。「日本でも同じことが起きている」と耳にして、僕のところに話を聞きにきたというわけです。

 その研究者も同じことを言っていました。銭湯もサウナも生活の動線上にあって、裸に近いフラットな状態で利用する場所です。日常にはそういう場所がなくなってきているから、コミュニティーとしてうまく機能させることが大切なんだと。

編集F そういえば、先日インタビューした介護事業者では、入浴だけのデイケア施設をつくったと言っていました。介護保険は使えるけど、まだ歩いて生活できる程度に元気な高齢者が、入浴だけしてみんなと話して帰っていく。その施設では介護保険が使えるので、介護事業者にとっても収入を確保できるという話を聞きました。銭湯をベースにそういうこともできそうですね。

三浦 いいですね。銭湯については、最近発見したことがあります。人々の記憶に残りやすいんですよ。

 例えば、スウィングジャズの活動で「リンディーホップ」というダンスのイベントをやっているんですが、その言葉は誰も知らないから、どんなに話してもなかなか記憶に残らない。「越境リーダーシップ」という言葉も、まだ知らない人が多いですから記憶に残りにくい。

 でもね、僕の銭湯の活動についてはみんな覚えていて、僕は「銭湯の人」「銭湯の仕掛人」という認識になっているんです。先日、タイに出張した時に知人と会ったんですけど、「三浦さん、タイには銭湯がないのに何で来たんですか」って…。

瀬川 銭湯にしか行っていない人に見られているわけね(笑)。越境リーダーシップのウェブサイトには、銭湯の話は載せていない?