長岐 プロの芸人さんでも、1時間でそんなにもらえない人もいるんじゃない?

三浦 そうですよね。イベントを始めてから1年間で六つくらいのメディアで取り上げてもらいましたから、銭湯としてもすごい宣伝ですよ。

瀬川 その銭湯のオーディオ機器も、一般の人が音を聴く機会はなかったわけでしょう?

三浦 全くなかったですね。このイベントを始めてから「銭湯ソーシャルデザイン」というプロジェクトを立ち上げました。

 ほとんどの銭湯は、風呂に井戸水を使っています。だから、銭湯の周囲250m圏内に銭湯を建ててはいけないというルールがあって、昔は銭湯の周辺に木造の風呂なし賃貸アパートがあるという感じでコミュニティーができていました。

 では、例えば、東京を直下型地震が襲って水道が止まったら、どうでしょう? 銭湯はライフラインの代わりになり得ます。不測の事態のときに水を確保できる銭湯は地域の資産なんですよ。

 僕はほぼ毎日、夜に銭湯に行くんですけど…。

瀬川 家にお風呂はあるんだよね。

三浦 あります。最初は、妻にすごく怒られましたけど、最近は諦められて…。

 それはともかく、夜の銭湯には独り暮らしのお年寄りがたくさんいます。銭湯の存在は、地域による見守りの効果にもなっているんです。「今日は、サトウさん来ないね」とか。2日間来ないと心配になって、銭湯の方から電話したりする。もし、銭湯がなくなると、おじいちゃん、おばあちゃんが毎日現れる場所がなくなって分散してしまう。そうなると、介護の行政コストが増大します。

長岐 祐宏(ながき・ゆうこう)<br>1989年4月にセイコーエプソンの販売子会社であるエプソン販売に入社。約11年間、営業や技術、サポートの販売現場経験を得る。米DEC社との共同プロジェクトに参加し、ネットワーク技術の資格を取得。2000年からセイコーエプソンでプリンタ事業部、デバイス事業部、新規事業開発本部、システム事業部、開発本部の複数部門を経験。主に、新規商品の開発企画や事業企画を軸に活動する。特に2006年以降は他社と連携した大型新規プロジェクト(小型プリンターや小型プロジェクター、ハイビジョンビューワーなど)をリーダーとして取りまとめる。人事部を経験後、2013年11月に退職。他社のビジネスアドバイザーを行い、2014年10月にビジネスの新しいビジョン開発や、プロデュースを手掛ける「<a href="http://www.marcury-vision.com" target="_blank">MARCURY VISION</a>」を設立、代表を務める。(写真:稲垣 純也)
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長岐 祐宏(ながき・ゆうこう)
1989年4月にセイコーエプソンの販売子会社であるエプソン販売に入社。約11年間、営業や技術、サポートの販売現場経験を得る。米DEC社との共同プロジェクトに参加し、ネットワーク技術の資格を取得。2000年からセイコーエプソンでプリンタ事業部、デバイス事業部、新規事業開発本部、システム事業部、開発本部の複数部門を経験。主に、新規商品の開発企画や事業企画を軸に活動する。特に2006年以降は他社と連携した大型新規プロジェクト(小型プリンターや小型プロジェクター、ハイビジョンビューワーなど)をリーダーとして取りまとめる。人事部を経験後、2013年11月に退職。他社のビジネスアドバイザーを行い、2014年10月にビジネスの新しいビジョン開発や、プロデュースを手掛ける「MARCURY VISION」を設立、代表を務める。(写真:稲垣 純也)

 今は、そういうことはそれほど顕在化していないし、銭湯に行かない人にとっては、銭湯はどうでもいい存在でしょう。でも、日本の都市部で起こる問題の中には、銭湯で解決できることが結構たくさんあると思います。

瀬川 それは、対策を急がなければならないね。だって、急がないと銭湯はなくなってしまうよ。

三浦 銭湯自体が抱える課題でも、越境的なコミュニティーをつくれると思うんです。これまでお会いした越境リーダーには、銭湯の愛好家が多いので。

長岐 なぜですか。

三浦 みなさん自宅に風呂はありますけど、いつも忙しくしているので、何も考えない時間をつくるのが大変なんだそうです。銭湯に行くと何もできないじゃないですか。だから、頭の中を整理するために銭湯を使っている人が多い。もちろん、気持ちよくて、元気になるということもありますが。

編集F 具体的に誰かと一緒に「銭湯ソーシャルデザイン」を手掛けているんですか。