長岐 プロの芸人さんでも、1時間でそんなにもらえない人もいるんじゃない?
三浦 そうですよね。イベントを始めてから1年間で六つくらいのメディアで取り上げてもらいましたから、銭湯としてもすごい宣伝ですよ。
瀬川 その銭湯のオーディオ機器も、一般の人が音を聴く機会はなかったわけでしょう?
三浦 全くなかったですね。このイベントを始めてから「銭湯ソーシャルデザイン」というプロジェクトを立ち上げました。
ほとんどの銭湯は、風呂に井戸水を使っています。だから、銭湯の周囲250m圏内に銭湯を建ててはいけないというルールがあって、昔は銭湯の周辺に木造の風呂なし賃貸アパートがあるという感じでコミュニティーができていました。
では、例えば、東京を直下型地震が襲って水道が止まったら、どうでしょう? 銭湯はライフラインの代わりになり得ます。不測の事態のときに水を確保できる銭湯は地域の資産なんですよ。
僕はほぼ毎日、夜に銭湯に行くんですけど…。
瀬川 家にお風呂はあるんだよね。
三浦 あります。最初は、妻にすごく怒られましたけど、最近は諦められて…。
それはともかく、夜の銭湯には独り暮らしのお年寄りがたくさんいます。銭湯の存在は、地域による見守りの効果にもなっているんです。「今日は、サトウさん来ないね」とか。2日間来ないと心配になって、銭湯の方から電話したりする。もし、銭湯がなくなると、おじいちゃん、おばあちゃんが毎日現れる場所がなくなって分散してしまう。そうなると、介護の行政コストが増大します。
今は、そういうことはそれほど顕在化していないし、銭湯に行かない人にとっては、銭湯はどうでもいい存在でしょう。でも、日本の都市部で起こる問題の中には、銭湯で解決できることが結構たくさんあると思います。
瀬川 それは、対策を急がなければならないね。だって、急がないと銭湯はなくなってしまうよ。
三浦 銭湯自体が抱える課題でも、越境的なコミュニティーをつくれると思うんです。これまでお会いした越境リーダーには、銭湯の愛好家が多いので。
長岐 なぜですか。
三浦 みなさん自宅に風呂はありますけど、いつも忙しくしているので、何も考えない時間をつくるのが大変なんだそうです。銭湯に行くと何もできないじゃないですか。だから、頭の中を整理するために銭湯を使っている人が多い。もちろん、気持ちよくて、元気になるということもありますが。
編集F 具体的に誰かと一緒に「銭湯ソーシャルデザイン」を手掛けているんですか。