三浦 銭湯は地域の生活動線なので、営業中のお客さんがいるときに、ここで音楽のイベントをやったら面白いと思って、言い出すチャンスを狙っていたんです。急にお願いしたら、ダメだと思って。あるとき、話をしていたらチャンスが来て、「ここでライブでもやってみたらいいじゃないですか」と軽く振ってみたら、「僕はそういうつながりがないんで…」ということだったので、「じゃあ、僕がやりましょうか」と。

瀬川 どれくらいの頻度で何回くらいイベントをやったの。

三浦 毎月1回で始めて2年になります。今、「地域活性化のためにオープンイノベーションを」という話がありますけれど、それを具現化するのはこの銭湯の取り組みのようなものなのではないかと思っているんです。地域のために、住民がそれぞれ持っているリソースを同じ目的のためにうまくつなぐ。それによって、地域の生活者を結ぶ新しいコミュニティーが生まれていく。

瀬川 なるほど。銭湯という場をハブにしたコミュニティーですね。銭湯は場を提供し、三浦さんは自分が持っている音楽コミュニティーのリソースを提供している。演奏をしているミュージシャンは三浦さんの知り合いで、聴きにきている人は地域の人なんですね。

三浦 そうです。

長岐 ちょっと分からないんだけど、それは風呂に入る前に聴くの?

銭湯での音楽イベント「湯あがり音楽フェスティバル」の様子(写真:三浦氏提供)
銭湯での音楽イベント「湯あがり音楽フェスティバル」の様子(写真:三浦氏提供)

瀬川 それは大事だね。イメージが違う。

三浦 入った後です。湯上がりにビールやコーヒー牛乳を飲みながらライブを聴く。30分のライブ演奏を2セットやります。

長岐 結構、本格的ですね。でも、湯冷めしちゃう(笑)。

三浦 だから、セットの間は、例えば45分とっています。そしたら、2〜3回は風呂に入れますから。

瀬川 銭湯代を払うだけで。

三浦 そうです。だから、ミュージシャンへの報酬は投げ銭にしています。

瀬川 結構、払う人はいるの?

三浦 ええ。お年玉用のぽち袋に3000円くらい入れて投げ銭するおばあちゃんもいます。
 
長岐 おひねりだ!

三浦 そうなんです。最初、投げ銭と言っても意味が分からないんじゃないかと思って、「演奏が気に入ったら100円とか、ビール1杯分くらいとかを入れてください」と説明したんですけど、おじいちゃん、おばあちゃんはお札を入れてくれて。

 「投げ銭って、分かります?」と聞いたら「馬鹿にするな」と叱られました(笑)。「昔は、温泉に芸人や役者が来て、みんな投げ銭をしていたんだ」と。

 銭湯のイベントでは風呂桶に入れてもらうんですけど、1回で1万円とか1万5000円くらいにはなりましたね。

瀬川 銭湯のライブ演奏でお札で投げ銭なんて、なかなかもらえないよね、普通は。