イラスト:楠本礼子
イラスト:楠本礼子

 2015年6月、開発№005「全自動調剤監査システム『ドラッガー』」のプロジェクトが大きく前進した。当初のメンバーである包装材料メーカーと自動車部品メーカーの2社に加えて、新たに調剤薬局チェーン運営企業が正式に参加することになったのである。

 それぞれの分野で強みを持つメーカー2社が集まっていたので、「作る」ことに関しては不安がなかった。問題は、ユーザーニーズがなかなか見えてこなかったことだ。2015年2月にプロジェクトが始動してから数回のミーティングを開き、多くの議論を重ねてきたことで、それらしき仮説は幾つか浮かび上がってきた。だが、ユーザー不在の議論だったこともあり、自信を持って先に進めなかったのだ。

 その点、新メンバーの調剤薬局チェーン運営企業はドラッガーのユーザーそのものである。同社は、既存の調剤薬局の在り方に限界を感じ、もっと地域に密着した調剤薬局を目指している。その足掛かりとして、ドラッガーに可能性を見いだしたという。同社がプロジェクトに加わることで、ニーズの洗い出しや絞り込みはもちろん、実際の店舗を使った実証実験なども期待できる。

何を自動化するのか

 ここで、あらためてドラッガーについて説明しよう。ドラッガーは、調剤薬局において薬剤師が手作業でしている業務を自動化するシステムだ。それによって、薬剤師はルーチンワークから解放され、服薬指導など付加価値の高い業務に多くの時間を割けるようになる。経営者にとっても、患者の満足度向上や業務効率化が期待できる。

 実は、業務を自動化すること自体はそれほど難しくない。メーカーにとって、自動化は普段から当たり前のようにやっていることである。必要な技術も、ほとんどそろっている。問題は、どのような用途を想定してシステムを開発するかということだ。調剤薬局の在り方が大きく変わろうとしているのに、既存の業務をそのまま自動化しても意味がない。

 今後、調剤薬局を取り巻く環境の変化としては、地域医療への対応や介護施設との連携などが挙げられる。その中でカギとなりそうなのが「一包化」だ。一包化とは、異なる種類の固形薬を1つの袋にまとめること。高齢化に伴って薬の誤飲を防ぐという観点から、一包化の需要は増えている。介護施設でも、職員が薬を準備する手間を削減したり、薬の取り違えを防いだりするために、調剤薬局に対して一包化を求めるようになっている。

 とはいえ、現在の一包化のやり方が本当にいいのか。そこを突き詰めることによって、ビジネスモデルも見えてくるはずだ。そこでメンバーは複数の介護施設を実際に訪問し、現場に潜む真のニーズを探し始めた。今後は、そのニーズに基づいてビジネスモデルを絞り込み、開発を加速させる。