必要な分だけトレーに供給

 次に、この樹脂製トレーのお薬カレンダーをどのように作製するのか説明する。まず、薬の錠剤やカプセルが入った「PTPシート」を専用のスロットに投入する。PTPシートは、アルミ箔で封止されたシートで、固形の処方薬のパッケージとしては一般的なものである。

 このPTPシートをスロットに投入すると、装置が自動で必要な数だけ薬をPTPシートから取り出す(除包)。次に、X-Yテーブルを用いてそれぞれのポケットに薬を供給していく(分包)。最後に、ポケットごとの薬の数が正しいことを画像検査で確認し、トレーと用紙を貼り合わせて封止する(一包化)。用紙には、薬を飲む人の名前や服用タイミングをあらかじめ印字しておく。

トレーのポケットに薬を供給している様子
トレーのポケットに薬を供給している様子
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 装置は標準で8個のスロットを備えている。標準のスロットは薬の配置が2列のPTPシートにのみ対応しているが、オプションとして3列のPTPシートに対応したスロットを最大で4個まで増設できる。

 患者の処方箋を扱うシステム(レセコン)と連動させられるので、手作業によるミスが起きにくく、薬のトレーサビリティーを確保できるという特徴がある。前述の通り、お薬カレンダーを作製する過程において、トレーのポケットに供給した薬の数が正しいかどうかを画像検査によって確認しているが、これはレセコンの処方箋データを照合することで実現している。

まずは薬局で実証実験、そして発売を目指す

 一包化は、ドラッガープロジェクトで当初から議題に上がっていたコンセプトだった。そのことは、これまでの報告記事でも触れてきた。高齢化に伴い、個人の患者や介護施設などを中心に一包化の需要が高まっている。しかし、薬局の薬剤師にとって一包化作業の負担は重かった。さらに、一包化作業を自動化した既存の装置には、「高価」「袋に入った状態で監査しなければならない」「音が大きい」などの点があった。

 ドラッガープロジェクトのアイデアが盛り込まれた一包奉仕によって、薬剤師は一包化作業から解放され、服薬指導など付加価値の高い業務に多くの時間を割けるようになる。経営者にとっても、患者の満足度向上や業務効率化が期待できる。

 今後は、実際に多くの薬局を運営しているトーカイメディカルで一包奉仕の実証実験を進める。実証実験の開始は、2017年1月を予定している。さらに、同年4月の発売を目指す。

 一包奉仕は、薬局の業務を効率化するだけではなく、予防医療や地域医療への対応など新しいビジネスモデルの対応に取り組む薬局を支援するものになるだろう。今回のドラッガープロジェクトでは、薬局のビジネスモデルや医療の在り方などの大きなテーマについて十分に議論を尽くせなかったという思いがメンバーにはある。装置自体のビジネスと並行して、このような大きな議論を進めることも視野に入れている。