三反田 確かにいずれ施設に入ることが確定していたら、めちゃ考えますよね。逆に言うと、そこまで真剣に考えている人が現状はそれほどいないということでもある。
左 そう。だから、気付いたときには親が介護受けることになって、でも知識不足でどうしていいか分からない。国民全体が理解していないと介護サービスのクオリティは上がらないんです。この業界は何もしなくても売り上げが立っちゃうということもあって、情報発信が全く足りてないんです。
僕の会社で手掛けている「いきいきらいふSPA」という施設は、いわゆる介護施設には見えないことが特徴の一つ。自分で受けたい介護サービスを考えたときに思い浮かんだのが、ホテルのラウンジでお茶を飲みながら、お風呂に入るのを待ちたいということでした。そうすると和室ではない。都内でスタートしているので、賃料が安く狭い場所で、どうやって収益を高くするかという考え方で展開しています。
おしゃれな感じで、名前が「いきいきらいふSPA」としか見えないから、OLのお姉さんがネイルサロンと間違えて入ってきちゃうこともあって、そうすると我々は「65歳以上の会員制です」と話すんです。
三反田 それは、かっこいいな。
左 そうでしょう? 介護保険は65歳以上にならないと使えない一種の会員制だから、「早く65歳になりたい」と思えるようなサービスを作っていかないと。年を取ることが恐怖ではなく、“ラブ・エイジング”という考え方で最期の世界と向き合う、僕らが作っているのはそういう価値なんだと思います。
子どもを育てて成人して、65歳になったらあとはずっと白い病院の廊下を歩かされるだけの世界なんて「ノー」でしょう。だったら、男性であれば、介護保険を使ってきれいな女性を見たほうが元気になるじゃないですか。だから、スタッフの女性にはよく言うんです。「おじいちゃんたちの最期の楽しみは、君たちのきれいな顔を見ることなんだから、化粧してマスクは外しなさい」って。それが、おじいちゃんたちの活力になるんだから。介護の現場では感染予防でマスクをするのが通例ですけど、それだといかにも味気ない。
三反田 それは、左さんの活力じゃないんですか(笑)。でも、女性も同じかもしれませんね。おばあちゃんたちも、かっこいい若い男性を見たいかもしれない。
左 だから、ジャージ姿じゃないぞと。介護業界の男性は、ポロシャツとシャカパンのユニフォームで職場まで来る人が多いんです。でも、家から会社までは社会人としてスーツであり、店舗に入ってから自分たちのユニフォームであるポロシャツを着ればいい。「介護業界のブランドを作っているのは君たちだし、業界全体のイメージを変えたいなら、君たちがやっていることはただのズボラだよね」という話をしています。だって、夏は暑いからポロシャツ、短パン、ビーサンで出勤という姿を見たら、通勤しているほかの業界のビジネスパーソンは「こいつら、何?」と思うでしょう。それで介護だと分かったら、「ああやっぱりね、介護ってそんなものだよね」というふうになってしまう。
三反田 左さんにしゃべらせたら本当にキリがない。まだ塩塚さんのお話を聞いてないのに(笑)。
塩塚 いや、でもすごくハートに響きました。ドリーム感もありますよね。介護に興味を持ちましたよ。
三反田 じゃあ改めて塩塚さん、ばくだん焼のことをひとつ。この間、人気マンガの『弱虫ペダル』とコラボした取り組みは斬新でしたね。なぜ、そういうことに取り組もうと思ったんですか。