斉藤 昨年末に介護事業者連合を立ち上げたんです。介護は医療と同じように保険制度で成り立っているし、超高齢社会に入った日本では介護事業の重要度はますます高まっている。しかし、医療における医師会のような、発信力・発言力・政治力を業界全体としてとりまとめた団体がなかった。
もちろん、団体はあるのだけど、老人ホームは老人ホーム、デイサービスはデイサービス、訪問介護は訪問介護というように業種ごとに協会があってすごく細分化してしまっている。全国で約171万人も従事者がいる業界なのに、各団体が分散してしまっているので、これを統合する連合組織を作ろうという趣旨で立ち上げたものでした。
介護に関わる前はコンサルティング企業にいたんですよ。介護に移ったのも、実は最初は何か高い志があってのことじゃないんです(苦笑)。
大学を卒業して3年間、ベンチャー企業のコンサルをしていたんですが、よくある話で、コンサルティングじゃなくてマネジメントをしたくなってきた。それで伸びしろのありそうな、成長しそうな企業、アーリーステージにあって、上場しそうな会社へ行こうと思ってあちこち探して見つけたのが、当時老人ホームを2棟経営していて、2年後にIPO(新規株式公開)を目指す会社でした。
結局そこに7年間在籍し、今では250拠点ほど展開している大手の一角にまでなりましたし、そこで2年目から取締役という立場をいただいて、運営事業本部長として、予定の1年遅れではあったけど、上場させることができました。
リアル 介護に知見があったわけではないのですね。
斉藤 当初は介護の「か」の字も知りませんでしたし、当時は“どベンチャー”の企業。4棟目となる新潟での開設の際に、その責任者として行ってくれということになりましたが、当時はお金のない会社だったので、部屋はたくさん空いているから老人ホームに住んでくれと(笑)。僕もまだ若かったし、そのまま1年住み込みでおじいちゃんおばあちゃんたちと寝食を共にして働いたのですが、それが僕にとっての介護の現場体験になりました。
夜勤のスタッフたちと寝泊りを一緒にして、毎日語り合い、教えてもらって、介護をビジネスの観点でしか見ていなかった僕が、福祉とか地域社会という観点からこの業界を考えることができるようにもなったんです。
介護は今、3K(きつい、危険、きたない)の代名詞みたいに言われる不人気の業種なんですけど、それ以上にやりがいのある仕事だと思うんです。人からは感謝される、地域のため、社会のために働いているという実感がある、こんないい仕事はないと感じるようになりました。ビジネス的にも、これからは高齢者が増える一方ですから、国内唯一の成長産業とも言えるわけで、チャンスにもあふれている。
三反田 一方で、課題も山積みです。