三反田 昨日聞いた武谷さんのお嬢さんのお話がすごく参考になると思っているんですよ。高校生のお嬢さんが、日本から引っ越して今はシンガポールで、すごく感性が変わったというお話をしていただいてもいいですか。

武谷 大した話じゃないかもしれませんが、夏休みで日本に帰ってきた娘が「日本で服を買いたい」というので、ちょっと点数を稼ごうと思って(笑)。「じゃあ、お父さんが渋谷の109へ連れてってあげよう」って連れてったんですね。中に入るのは恥ずかしいので(笑)、さぞたくさん買ってくるだろうと外で待っていると、娘が何も持たずに戻ってきた。「何で何も買わないの」と聞いたら「日本の洋服はかわいいし、デザインも凝ってるんだけど、どれも似たような感じがするし、みんな同じような服を着ているから、買う気になれなかった」っていうんです。

三反田 着ている自分が恥ずかしくなるような…。

武谷 そうそう。商品としてはすごくいいんだけど、「シンプルでかっこいいのがいい」というので、結局ファストファッションのお店なんかに連れて行ったんですけどね。

 日本のファッションは、ブランドも多いしデザインもいいけど、全体のトレンドは同じになっているんですよね。シンガポールは、明らかに日本よりもファッショナブルじゃないんですが、そういう「結局みんなが似たようなものを着ている」という日本の状況に、違和感を覚えるんでしょう。

 でも、もともとはそんなことを言う子じゃなかったんです。どちらといえば自己主張なく、みんなと同じことをやって「わー」と楽しむというか。シンガポールに行って3年ですが、そういうところが変わったんだと気付きました。

三反田 日本人のそういう“個性”の出し方ってすごく変ですよね。島国のせいか、個性を出すよりは協調性。それがいい部分もあるし、悪い部分もあるし。ただ、子供や若い世代では、そんなの関係ないし、という人たちが際立ってきている感触があります。

武谷 そうですね。

三反田 お二人は、大きく変化していくであろうこの先の4、5年をどう捉えていますか。

高橋 伸次(たかはし・しんじ)。グランディール 専務取締役。1984年北海道歯科技術専門学校卒業、2008年から現職(写真:加藤 康)
高橋 伸次(たかはし・しんじ)。グランディール 専務取締役。1984年北海道歯科技術専門学校卒業、2008年から現職(写真:加藤 康)
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高橋 沖縄に関しては今、インバウンドで大変なことになっている。アジアからのお客様がすごい。稼働中のホテルの50%が海外からの方、町を歩くと中国人観光客ばかり。すごいですよ、ドックに入りきれないような3000人クラスの巨大なフェリーが毎週沖縄にやってくる。グワーッと大挙して押し寄せて買い物して、グワーッと帰っていく。本島だけじゃなくて例えば石垣島なんて、観光客が120万人ですよ。

 そこで問題になるのが、ハードがない、人手がないという状況です。マナーの問題がどうこうなんて言っている場合じゃない。バスが足りない、運転手がいない。ホテルも世界中のホテルチェーンが沖縄に進出して、今なお新しいホテルが建設中なんですが、働く人がいない。清掃が間に合わなくて、お客様が午後4時になっても部屋に入れないなんて状況がある。このままだと、物足りないサービスで、リピーターを失うという状況になりかねないんですよね。

 これからは、人手の問題も含め、本物のホスピタリティーが何かが問われるようになると思います。そこをしっかりできれば、もともと発信力のあるエリアなので、うまくやればますます発展していくことができるでしょう。

我々としても、考えているのは「本物」を伝えるということ。ただ売れるから作る、売るではなくて、踊らされないコンセプト、ストーリー、味を伝える商品作りをしていくこと。それによって、ブームではなく、継続的な収益の望める産業にできるのではないかと考えています。