非接触給電技術とは、その名が示す通り、プラグやコンセントによる接触や、電源から伸びるワイヤーが存在しない状態(ワイヤレス)で電力を送る技術です。その原理は古くから知られていて、様々な商品に適用されてきました。

 既に20世紀の終わりから多くの機器に非接触給電技術が適用されていて、容量を上げるための研究も進められていました。そして、2007年にMIT(マサチューセッツ工科大学)の研究チームが、いわゆる磁界共鳴方式により最大数メートル程度の距離から大電力・高効率の非接触給電に成功しました。この報告を受けて、社会的関心が急激に高まり、研究開発が一気に活発になりました。

 特許庁は「平成26年度特許出願技術動向調査」において、非接触給電関連技術に関する特許出願動向を調査し、日本企業の存在感が目立つなどその実態を明らかにしました(特許庁による調査レポートの概要(PDF形式)は、こちら)。同調査の主要部分を本稿で紹介します。

 図1に本調査の技術俯瞰図を示します。本調査では、特許文献を分類するために、非接触給電に関する技術を、磁界結合方式や電界結合方式などの「給電方式」、車両やモバイル機器などの「応用技術」、故障への対策や小型化異物侵入対策などの「技術課題」、「部分構造技術」と「制御技術」で大別し、さらに細かく技術区分を設けました。

図1 技術俯瞰図
図1 技術俯瞰図
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出願人国籍別の特許出願件数推移:数字に表れたMITがもたらしたインパクト

 非接触給電関連技術の特許出願は、2006年では799件でしたが、2007年から急増し、2011年では3905件(2006年の約5倍)となりました。先ほど述べた通り、2007年にMITが磁界共鳴方式による非接触給電の研究成果を発表した影響があったと考えられます。MITの発表があった後すぐに日本・米国企業の出願が増加し、少し遅れて欧州・韓国企業の出願が増加しました。(図2)

図2 出願人国籍別出願件数推移および出願件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2000~2012年)
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図2 出願人国籍別出願件数推移および出願件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2000~2012年)
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図2 出願人国籍別出願件数推移および出願件数比率(日米欧中韓への出願、出願年(優先権主張年):2000~2012年)
注)2011年以降はデータベース収録の遅れ、PCT出願の各国移行のずれなどで全出願データを反映していない可能性がある。