横浜市の大型マンションが傾いたことに端を発する杭打ち工事のデータ改ざん事件。今や横浜市のマンションだけにとどまらない深刻な事態となっている。今回は、次から次へと発覚する類似の杭打ちデータ偽装から見て取れる問題点を考えてみる。

次から次へと発覚するデータ偽装

 事の発端となった横浜市のマンションの工事を手掛けた旭化成建材の社長は、2015年10月13日の事件発覚直後に受けたインタビューで、特定の担当者1人に問題があった可能性をほのめかした。そして、発覚から2日後の10月15日、1人の担当者にデータ流用の不正があったと発表した。その発表では、担当者が杭打ちデータを記録機から紙に出力する際に、インク切れなどのプリンターの不具合で適切にデータを取得できなかったため別のデータを流用したことが原因ということになっていた。旭化成建材はその後、この担当者が手掛けた他の物件で同様の不正がなかったかどうかの調査を始めた。

 だが、北海道庁が旭化成建材が関与した工事を並行して独自調査したところ、同社が北海道で手掛けた工事でもデータ流用があったことが10月28日に判明した。しかも、横浜とは別の担当者だ。

 これを受けて、旭化成建材は調査対象の範囲を拡大。その結果、11月3日の時点で、同社が手掛けた過去10年の工事のうち、その1割に当たる約300件でデータ改ざんがあったことが明らかになった。改ざんに関与した担当者は10人以上だ。

 さらに11月13日には、コンクリート杭打ち工事で業界トップクラスのジャパンパイルでも18件のデータ流用があったことが明らかになった。その後、それ以外の会社でもデータ流用が相次いで発覚。本稿を執筆している2015年12月下旬の時点で旭化成建材、ジャパンパイルのほか、三谷セキサン、前田製管、NC貝原コンクリート、中部高圧コンクリートの計6社でデータ改ざんが見つかっている。件数自体は、今でも散発的に発覚し続けているというありさまだ。