2015年10月上旬、IT/エレクトロニクス関連の展示会「CEATEC」が開催された。筆者は近年、CEATECには毎年訪れており、例年通り今年も来場した。実はこのコラムでも昨年、「停滞のCEATEC、成長のFOOMA」という記事を執筆している。その記事の中では、CEATECへの期待を込めて、不振のCEATECと好調の食品機械の展示会「FOOMA」を比較した。それから約一年、何か変化があるかとCEATECを見て回っていたときに、あることに気がついた。総菜と電子部品は意外に共通しているところが多いということだ。今回は、この点について触れてみたい。

賢い電子部品=素材+モジュール化+ソフトウエア

 今回のCEATECに行く前に、ソニーや東芝などが出展しないというニュースが流されていた。ひょっとすると、参加者が少なく熱気がないのではと気がかりだった。しかし、実際はそうではなかった。電機メーカーがいつも集中しているホールについてはちょっと寂しい感じがあったが、電子部品メーカーのブースには常に多くの来場者が詰めかけていた。村田製作所、ローム、オムロン、京セラ、TDK、アルプス電気など多くの電子部品メーカーが単に部品だけではなく、モジュールやソリューションなど多くの展示品を出品していた。

 電子部品は、スマートフォン(スマホ)からウエアラブルへの進化に伴い、搭載部品に対する技術要求が一段と高度化しており、より小型・高性能を追求した超小型部品が求められている。また、IoT(Internet of Things)の進化に伴い、従来の家電や通信端末を超えて、クルマ、ヘルスケア、インフラなどへの応用が急拡大している。電子部品メーカーは単品の提供だけではなく、通信機能やソフトウエアを組み込んで自ら動作するモジュール、いわゆる「賢い電子部品」に力を入れている。

 例えば、オムロンは2020年までに全FA機器に情報通信機能を搭載、IoT対応させていくと発表した、その第一弾となる機器のカテゴリーは光電センサーと近接スイッチだ。従来のこれらのセンサーは製品の有無などON/OFF情報のみを出力し、PLC(Programmable Logic Controller)などに接点信号として取り込むケースがほとんどだった。今後、通信機能が搭載されることで、上位側のコントローラーからの指令で動作モードやしきい値を変更することが可能となり、予知保全や稼働状態の自動診断などに役立てられる。

 アルプス電気は、指先ほどの小さな基板上に、5種類のセンサー(加速度センサー、角速度センサー、光センサー、温湿度センサー、気圧センサー)と無線通信モジュール、アンテナを詰め込んだ「マルチセンサーモジュール」を開発した。これらセンサーを載せれば、指輪やメガネなど身近な道具がウエアラブル端末へと変わってしまう。同モジュールを搭載したメガネで、転倒の検知、不快指数の検知、屋内・屋外の検知などが可能となる。

アルプス電気のマルチセンサーモジュールの展示
アルプス電気のマルチセンサーモジュールの展示
手前はその部品、スクリーンはその応用シーンの説明。
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 日本の電子部品メーカーの競争力の源泉の一つは、高い素材技術だ。電子部品の性能を最終的に決定づけるのは「材料」である素材の良しあしであり、そのため、素材から一貫生産して自社で手がける日本の電子部品メーカーが多い。電子部品は、素材を生かして、モジュール化とソフトウエア機能で、賢くなっている。いろんな用途が期待できるようになっている。

今年のCEATECの会場の様子
今年のCEATECの会場の様子
賑わう電子部品メーカーの展示ブース。
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