最近、東芝の植物工場「東芝クリーンルームファーム横須賀」の閉鎖など、何件かの植物工場の倒産や閉鎖のニュースを見た。多くの植物工場は赤字経営とも言われている。センシング、自動制御、クラウド管理、さまざまなテクノロジーを駆使して、天候に依存しない、衛生的で高機能な野菜を提供する植物工場は、次世代農業の代名詞のように呼ばれて、数多くの企業が参入する分野なのに、なぜこのような状況になってしまったのか…。

 こうしたニュースを読みながら筆者が野菜から連想していたのは「朝市」だ。日本でもたまに見かけるが、定期的な朝市は都会では少ないのだろうか。話を元に戻すと、筆者は故郷の西安に帰省した時には、実は近所の朝市に必ず行く。西安では、経済の高度成長に伴い大型スーパーはあちこちに建てられたが、農家が中心となる直販の朝市は、生産者が見え、野菜を手で触って選べる限られた場所だ。しかも、西安では依然として数多く存在している。

 新鮮な野菜を食べたいのは、いつの時代でも同じ。だが、それを手に入れる手段は変化してきている。今回は、植物工場と朝市から、食文化とハイテクについて考察する。

朝市の野菜の「個性」と「表情」

 西安の朝市は、大体住宅地の中またはすぐそばで開かれている。その売りは、やはり野菜の新鮮さだ。ほとんどが当日の朝に採ったばかりのものだ。きゅうりだったら、表面にある棘が鋭く、触るとちょっと痛いぐらい。また、表面の緑は濃くツヤもある。大根には土が付いて大地の匂いが感じられる。その生き生きした「表情」は見るたびに惹かれる。野菜は、同じ品種でも大きさや形が違う。それぞれの野菜と「対話」するようにして悩み悩み選ぶのは楽しい作業だ。もちろん、農家との値段の交渉も買い物の楽しみの一部だ。