今後の日本医療を発展させる原動力として、遠隔診療の進展への期待は日々高まっている。これまでになかった診療形態モデルを生み出すばかりか、医師不足・偏在という待ったなしの課題を解決する手段としても急浮上しているからだ。

 先日、香川県高松市で開かれた第8回日本プライマリ・ケア連合学会において、遠隔医療のセッションがあった。そこで語られた現状と課題、さらに参加者間の議論から見えてきたのは、遠隔診療が秘める可能性への期待だった。例えば、情報技術(IT)との親和性が低い高齢者は遠隔診療を利用しにくいとの指摘があるが、高齢者を対象とした実証実験の中間報告では、問題は少ないというデータがまとまりつつあるという。

 また、高血圧や糖尿病の患者を対象とした対面診療と遠隔診療との比較試験なども始まり、エビデンスの蓄積が進むことも話題に上った。加えて参加者からも、認知症の患者や家族に対する遠隔診療の実証実験に取り組む事例が示されるなど、遠隔診療への取り組みが活発化していることをうかがわせるセッションだった。

 日本遠隔医療学会は、遠隔診療を含む「遠隔医療」を「通信技術を活用した健康増進、医療、介護に資する行為をいう」と定義している。誰と誰を結ぶかで分けると、臨床医と専門医間の遠隔医療(D to D:Doctor to Doctor)、臨床医と看護師や保健師間の遠隔診療(D to N & P:Doctor to Nurse and Patient)、臨床医と患者間の遠隔医療相談あるいは遠隔診療(D to P:Doctor to Patient)と形態は様々だ。

 実践例を挙げるなら、テレラジオジーやホルター心電図解析などの専門的診療支援、救急医療の場での医療支援、在宅医療への応用などが、複数の地域で取り組まれている(表1)。このうち、医師不足・偏在の対策になり得るものとしては、救急医療支援をはじめ「専門医の支援、現地研修(同科支援)」や「地域プライマリ・ケア支援(専門診療=医科支援)」などが該当する。

表1 遠隔医療形態モデル
表1 遠隔医療形態モデル
「遠隔医療提供体制に関する機能・形態評価案の検討」(長谷川高志、群馬大学医学部付属病院)において、遠隔医療の実態調査などをふまえて、複数地域で実践例があり、幅広く有効性がありそうな医療形態について整理されたもの
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 期待高まる遠隔診療だが、今後の普及のためには、法的整備と診療報酬上の評価をどうするかという課題もある。