特別講演などにも注目すべき話題が

 午後一番に始まったシンポジウムは、同センターと共同研究の体制下にある大学や病院などの関係者からも、多彩な演題の発表があった。そのため、予定の時刻を過ぎても議論が続くなど、関係者の熱の入れ方が伝わってきた。時間不足は、それに続く懇親会へまで持ち込まれるというような状況だった。

 今回のシンポジウムの中でも、とりわけ注目すべき特別講演があった。共同開発団体として活動する上海交通大学の呂宝粮教授によるものだ。タイトルは“Emotion Recognition and Driving Fatigue Detection from EEG”。つまり脳波解析によりドライバーの情緒変化や疲れを評価しようとの試みである。

 最近の中国の交通事故による死者は年間7万5000人にも達し、その防止策が社会問題として浮上しているという背景がある。その対応策を検討して、長年にわたり脳波の解析を中心とした研究の成果が実になりつつある。

 注目したのは、これまでの脳波解析ではあまり使われていないγ波までその対象に入れているという事実。これまでは高い周波数帯にあるβ波が上限で、その上のγ波領域(おおむね26~70Hz)の解析は行われていなかった。ところが、この領域は高次精神活動と直結するといわれ、これまでの低域部分だけでない広範囲の脳波解析によって、情緒や疲れのレベルと結びつけられそう、という研究だ。

 現時点での結果によれば、検出率が70~80%程度まで高まっており、あと2年以内には実用機が市販できそうとの見通しも述べられた。

 本件は演題の一例だが、これ以外にも、東北大学大学院の出江紳一教授から「末梢神経磁気刺激装置」の製品化例や、興味ある最新技術の紹介など話題満載というシンポジウムだった。