「医工連携」の適用サンプルの好例

 本特集の特徴の一つは、ユーザーとしての医療側からの記述に加えて、認証・標準化サイドから日本品質保証機構の浅田純男氏が、またメーカー・開発サイドから3人の著者がそれぞれの代用的な製品例を解説していることだ。

 本来、医療機器の開発は「医工連携」あるいは「産学連携」というタームで代表される傾向が強い。医療機器の特性上、医療(または医学)および技術(または工学)の境界学問あるいは境界技術の融合から出発している性質を有するからだ。本特集も、こうした実情に合わせるかのごとく、医療側とメーカー側からの記述に案分されている。

 さらに規制産業とも呼ばれる医療機器産業の本質から、「産官学連携」といわれることもある。その視点から、認証サイドにより日本発のISOとして意義のある「生活支援ロボットISO13482」の解説が託されている。ここでの視点は、「機器開発」という次元とは異なった特質を有しているが、新規医療機器を開発する過程においては不可欠な位置付けにあることが示唆されている。その標準化作業の過程も「新規開発」の一過程と考えれば、新しい事例を創り上げる際の創意・工夫が必要であることも理解できる。

 以上が、本特集の概要であるが、この特集の意図するところは、ロボット技術という現代の注目技術がこれからどう展開されるべきなのかも示されている。ロボットと医療機器の融合はまだ始まったばかりという状況下でありながら、将来は医療や介護の分野での主軸に成長する可能性のあることも大いに期待されている。ロボットやAIがこれから、医療技術あるいは医療機器とどう関わり、またどう融合してゆくのか、そうした見方が可能な課題も提供されている。

 ロボットやAIという技術的要素と「医療や介護分野での役目」は、現代用語となった「医工連携」の典型的な一事例ともいえよう。しかしながら、現状はまだ、試行錯誤のときであるといえるだろう。逆に言えば、今後の方向性・可能性については広大なスペースが開けているという考え方もできる。