2018年夏、西日本豪雨や連日の猛暑など、異常気象下における救急救命対応が重要課題との認識が高まっている。このような緊急事態において待望されているのが、災害対策用の医療機器だ。フジタ医科器械(前多宏信社長)は、災害対策用の可搬型医療機器の開発に着手し、災害現場などでの要望に応える生体情報機器への取り組みを開始した。

致死率の低下を目指す医療機器へ

 災害時などの緊急事態において、医療機器はその必要性が叫ばれつつも、現実的にはいまだに現場ニーズに応えられている状況とは言い難い。唯一、心臓疾患などによる突然死への救命率を高めているのがAEDの普及だ。とはいえ、その他の救急救命用機器となれば、救急救命士が手軽に使える医療機器に関して、突出して目新しいものは存在していない。

 特に、災害時には一刻を争う錯綜とした状況下にあるケースがほとんどだ。突発的かつ緊急事態としての心肺停止はもとより、受傷者の生理的状況を把握する手段に関して、ほぼ無防備であるといっていい。

 こうした混乱中での医療対応は、AEDによる処置だけが救命率を上げるものではなく、状況に応じた処置判断が求められる。例えば、受傷者の心電図のモニタリングや血圧の変化、また、酸素飽和度の低下が見られるかどうかといった、初動対応に必要な生体情報の把握が必須となる。急を要する現場で専門医の知識・処置が施せれば救命率も上がると想定される。

 フジタ医科器械は災害対策用の可搬型生体情報モニタリングシステムを開発中で、2018年内の販売を目指している。首都直下型災害なども視野に入れており、ポータブル化を主軸に据えている。

可搬型生体情報モニタリングシステム(提供:フジタ医科器械)
可搬型生体情報モニタリングシステム(提供:フジタ医科器械)
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 これまでのモニタリングシステムは、心電図モニタ・血圧計・パルスオキシメータなど単体・可搬型での普及はしているものの、今回のプロジェクトではこれに加えポータブルの超音波診断装置(超音波エコー)にも対応している。さらには、救急災害にターゲットを置いている関係上、心肺停止状況下で脈がない場合でも、局所の酸素化(rSO2)が推定できる局所酸素飽和度モニタ(NIRS)を組込んでいるのが特長だ。