このところ、医療機器に関わる書籍が相次いで刊行されている。これらを医療機器開発という一つの断面から読み解くと、「日本独自の」という枕詞が共通項として見えてくる。同時に、「若い開発者や医療従事者、さらには起業家に読んでほしい」という著者・編者・訳者の共通の意思が垣間見える。以降では、これらの共通項にも注目しながら、順を追って紹介していきたい。

日本型ベンチャーキャピタルの活用法

『医療機器開発とベンチャーキャピタル』(大下創・池野文昭著、幻冬舎)
『医療機器開発とベンチャーキャピタル』(大下創・池野文昭著、幻冬舎)

 2016年3月に刊行された『医療機器開発とベンチャーキャピタル』(大下創・池野文昭著、幻冬舎)は、主として米国での実績をもとに、開発政策面での日米格差について論じている。本コラムで1年ほど前に紹介した書籍『バイオデザイン』では、スタンフォード大学での医療機器開発の実情が記述されているが、本書ではタイトルのとおりベンチャーキャピタルに重点を置いている(関連記事)。共著者の池野氏は、このバイオデザインの主幹編集者でもある。今回は、その総合的施策の中からベンチャーキャピタルという主題を抽出した感がある。

 論点は、日本における最先端医療機器開発が米国に追従できない理由の一つが、ベンチャー企業の開発体制不備だというもの。ここに「開発のエコシステム」というフレーズを投入し、我が国にもその普及を促進したいという意図だ。書籍の中では、いくつかの具体例を示しながら、日本型のベンチャーキャピタルの活用方法を提案している。

 現況を考えるにつけ、このタイプの医療機器開発体制を日本で築くにはかなりの年数が必要との認識もある。ただし、時間がかかるからといって、今から手を打たなければ時代遅れにもなりかねない。その観点から現状を分析するためにも、現役の医療機器関連の起業家たちには大いに参考になるだろう。