医療機器の回収は、2014~2016年度の最近3年間で合計1224件もあった。1日あたり1件以上の回収が発生しているのが実情だ。何が原因で、このような憂うべき現況にあるのか、業界に関わる全ての人が冷静に考えてみる必要がある。

医療機器回収情報は毎日のように

 医薬品医療機器総合機構(PMDA)では、医薬品医療機器情報配信サービス「PMDAメディナビ」の配信サービスを行っている。その中には、安全性情報や各種通知とともに、回収情報もある。

 筆者も情報収集のため配信サービス受信の登録をしているが、驚くことにほぼ毎日といっていいほど、医療機器の回収情報が届く。

 下表は、この情報に基づき、年度別・クラス別(クラスの詳細は後述)に集計してみたものである。その数たるや尋常でないことを憂慮しつつ作成してみたが、心配のしきい値をはるかにオーバーしている状況にある。

3年間の総合計は1224件(表:「PMDA 回収情報」を基に筆者が作成)
3年間の総合計は1224件(表:「PMDA 回収情報」を基に筆者が作成)
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 不思議なのは、この状況を把握しているのかどうか、官民ともにこれらを問題視している動きが感じられない。あるいは、把握していてもそれを表に出したくない事情が働いているのでは、とそんな疑念が湧いてくる。

クラスⅠはゼロ、クラスⅡは半減を目指せ

 回収のクラスにはⅠ~Ⅲまでのレベルがあり、クラスⅠが一番重い。クラスⅠとは、“その製品の使用等が、重篤な健康被害又は死亡の原因となり得る状況”と定義されている。本来、医療機器のクラスⅠ回収は人の命を預かる重要な機器として、実際上あってはならないものだ。

 ところが、この3年間でクラスⅠの回収が漸増傾向にあり、何らかの手を打つべきときが来ている。中には、業界をリードすべき名だたるメーカーの製品も含まれるため、抜本的な対策が望まれるところである。

 もっとも、回収数が圧倒的に多いのはクラスⅡである。クラスⅡは、“その製品の使用等が、一時的な若しくは医学的に治癒可能な健康被害の原因となる可能性がある状況又はその製品の使用等による重篤な健康被害のおそれはまず考えられない状況をいう”と定義されるものだ。もちろん、レベルが低い回収だからといって、容認される問題でもない。この種のものは、短期間に半減あるいはそれ以下の水準になるよう、産業界の再認識が急務となる。