発明者別に見たIoTの姿

 特許出願状況を発明者別に見てみると、デンソーの亀山昌吾氏の出願が特許評価スコア(スコアが高いほど特許品質が高い)が高くなっている(図2)。基本的には自動車のIoT化に関する出願が多く、明細書の内容は他の情報機器や家電との連携技術が記載されている。しかし、継続した出願はなされていない。今後10年間の特許出願の継続性に関しては、LG Electronics社、米InterDigital社が注目される。

図2 発明者ごとの出願件数の推移
図2 発明者ごとの出願件数の推移
(出所:アモティ、日経BP社『IoTの未来 2017-2026[特許分析編]』より)
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 LG Electronicsは、ソクヨンホ氏が出願した特許の権利残存期間が長い。無線LANのサブ・ギガ帯無線通信技術に関するものである。IoTデバイス間のネットワーク接続技術には、データ転送速度、消費電力、信頼性、伝送距離など多様なニーズが求められる。同氏の特許から、利用シーンの拡大が見込める応用技術が登場すれば、無線LAN市場に大きな影響力を与える可能性がある。

 また、InterDigital社では、ダイアナパニ氏、インヒョクチャ氏、ポールマリニエール氏が出願した特許の権利残存期間が長く、M2M(machine to machine)、IoT環境下でのセキュリティー関連の出願となっている。セキュリティー技術は、プライベートな空間である家庭で使うスマート家電にとって、重要な技術になってくる。

 国内家電メーカーでは、パナソニックからの特許出願が多い。ただ、今後10年間の特許権利維持状態を見ると特許評価スコアの高い特許が少ない。ソニーのBluetoothを用いたスマート家電向けの表示デバイスに関連する特許が目立つ程度である。今後10年間の特許出願状況や権利残存状況からは、日本メーカーによるスマート家電技術の将来像が見えてこない。

 図3の製品ごとの出願件数を見ていくと、映像機器に関する出願が多く、図4の製品ごとの権利残存状況では映像機器の特許評価スコアが高くなっている。映像機器に関しては、スマートテレビが早くから市場で製品化されていること、Webブラウザーの搭載が進み、インターネットへの親和性が高いことから、IoT化に取り組む以前からテレビのネットワーク化が進んだものと見られる。

図3 製品ごとの出願件数推移
図3 製品ごとの出願件数推移
(出所:アモティ、日経BP社『IoTの未来 2017-2026[特許分析編]』より)
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図4 製品ごとの権利残存状況
図4 製品ごとの権利残存状況
(出所:アモティ、日経BP社『IoTの未来 2017-2026[特許分析編]』より)
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