電力会社が蓄電の導入を加速

 太陽光パネルは大量生産によってすでに低価格化したが、蓄電池の市場は一体どうなっているのだろうか? 12日に行われた「ソーラーと蓄電池の交差点」と題する基調講演で、電力会社で構成される米スマートエレクトリックパワー協会(SEPA)でCEO(最高経営責任者)兼社長を務めるジュリア・ハム氏は、「まだ小規模ですが、蓄電池市場の成長は加速しています」とし、昨年電力会社が207MW(257MWh)の蓄電池を系統に接続したデータを発表した。さらに、電力会社は供給側にグリッド安定用に蓄電池を設置するだけではなく、電力需要側での蓄電池の設置を促す数々のプログラムに乗り出しているとも語った(図3)。

図3●SEPAでCEO(最高経営責任者)兼社長を務めるジュリア・ハム氏が電力会社による蓄電池の導入傾向を説明
図3●SEPAでCEO(最高経営責任者)兼社長を務めるジュリア・ハム氏が電力会社による蓄電池の導入傾向を説明
(出所:J. Movellan)
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 米調査会社のブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)で米国太陽光発電に関するアナリストを務めるヒュー・ブロムリー氏は、太陽光発電市場と蓄電池市場を比較するため、シリコン原料とリチウムイオン電池の価格推移を発表した。ここで重要なのはテクノロジーの統合。太陽電池には異なるタイプがあるものの、シリコン結晶系が市場をほぼ独占している。一つのテクノロジーに集中することにより、生産・製造の規模が拡大でき、価格は大幅に下がりすでに1W当たり30セントに達している。

 蓄電池もこのような道筋をたどるのだろうか? 太陽光発電と蓄電池の違う点は、蓄電池市場は携帯、ラップトップなどの小型民生用、電気自動車(EV)など車載用、そして電力需給を調整する定置用蓄電池の3つのセグメントから成り立っている。太陽光パネルがシリコンテクノロジーに集約されたように、蓄電池もリチウムイオンに集約され始めている。

 ブロムリー氏は、「(蓄電池市場という)ゲーム(の勝算)は規模にかかってきます。そして、規模はEV(の成長)にかかってきます」と語った。BNEFのデータによると、EVのリチウムイオン電池の需要は定置型の約20倍で、民生用の需要は定置型の約30倍になるという。