米国の陸軍、海軍、空軍、海兵隊の4つの軍を配下に抱える米国防総省は、2025年までに太陽光発電を含め出力3GWもの再生可能エネルギーの導入計画を掲げている。同省は、エネルギーコストの削減に加え、海外からの輸入燃料への依存度を減らすことで、エネルギーの安全保障と持続可能性を高める、というミッションを担っている。

 米国防総省は年間200億ドルをエネルギー調達に費やし、約50億ガロンもの石油を消費するという、世界でも最大規模のエネルギー多消費型の組織である。同省は2025年までに消費するエネルギーの25%を再生可能エネルギーで賄うというゴールを立てた。同省の配下である陸軍、海軍、空軍は、それぞれ2025年までに最低1GWの再生可能エネルギーを導入すると公約している。3つの軍を合わせると3GWになるわけだ。

すでに再エネ比率は10%を超える

 2015年5月に同省が発表したエネルギーマネジメントレポートによると、2014年度時点で、空軍は6.7%、陸軍11.3%、そして海軍は26.5%のエネルギー需要を再生可能エネルギーで賄っている。国防総省全体では12.3%になり、目標である25%の約半分まで達したことになる。

 2014年度時点で同省は、1130以上の再生可能エネルギーに関するプロジェクトを進めている。地熱発電が発電量では全体の約50%を占める。さらに、2014年に陸軍が60MWのバイオマスをフォートドラム(Fort Drum)基地に導入したことにより、バイオマスの割合が21%までに高まった。次に太陽光発電が11%を占める。太陽光は、米国内の基地に645のシステムを設置し、発電している。

 米国防総省の各組織は、軍事基地内に大規模・分散型発電所を建設する場合であっても、自らプロジェクトを所有せず、主にプロジェクトデベロッパーに開発・設置を委ね、長期間の電力購入契約(Power Purchase Agreement : PPA)を結ぶ。

 米国防総省が再生可能エネルギーに力を入れているのは、安全保障を高めるという戦略的な理由からだ。基地内に分散型発電所を設置することにより、老朽化する送・配電線インフラ、そして遠隔の発電所に頼ることなく、災害時でも電力を確保できる。さらに、電力を長期契約で調達することで、エネルギー市場の変動リスクも削減できるわけだ。

 2015年8月、海軍は発電所の開発・運営を行う米Sempra US Gas & Power社とメガソーラー(大規模太陽光発電所)を電源としたPPAを結んだ(図1)。米政府機関が締結した同種の契約例では、最大規模となる。Sempra US Gas & Power社は、カリフォルニア州サンディエゴ市に拠点を持ち、Sempra Energy社の子会社である電力会社San Diego Gas & Electric(SDG&E)社の姉妹会社にあたる。

図1●カリフォルニア州サンディエゴ市で2015年8月に行われた海軍とSempra社のメガソーラー(210MW)に関する電力購入契約の調印式
図1●カリフォルニア州サンディエゴ市で2015年8月に行われた海軍とSempra社のメガソーラー(210MW)に関する電力購入契約の調印式
(出所:米国海軍)
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