今回の本コラムでは、スマートフォン向けチップセットの市場動向を解説する。スマートフォン市場は年々成熟が進んでおり、特にアプリケーションプロセッサーやOSプラットフォームの勢力争いは終息しつつある。一方、通信モデムでは5G(第5世代セルラー通信)に向けた継続的な開発が進んでおり、半導体プロセス技術の牽引役であるなど技術的な観点からの重要性は高い。

 我々は、2016年のスマートフォン市場規模を同年10月時点で前年比5%増の約15億台と見ており、これは他の調査機関の数字に比べてやや大きい。部品出荷および端末生産から見ると、同年第2四半期以降の需要が旺盛だ。第3四半期からは中国市場でチップセットやメモリー、ディスプレーの供給がひっ迫しており、これが端末生産のボトルネックとなっている。地域別では、東南アジアやインドでは成長が減速したものの、中国では予想以上にスマートフォン市場が拡大し、市場規模を押し上げた。携帯電話機市場におけるスマートフォンの比率は2016年時点で73.5%と我々は見ており、2017年以降も市場拡大の余地がある。

 スマートフォン市場を価格帯別に見ると、先進国ではオープンマーケット(SIMフリー端末)の拡大によりハイエンドが減少し、ミッドエンドが拡大傾向にある。一方、中国ではエントリーおよびローエンドからミッドエンドへと需要が移行しつつある。新興国でも今後、買い替え時により高い価格帯へ移行する可能性があり、ローエンドおよびミッドエンド(出荷価格200~400米ドル)に需要が集中すると我々は予想している。

 中国でミッドエンド端末拡大の恩恵を受けているのはHuawei社やOppo社、Vivo社など。一方、ローエンドセグメントで事業を拡大してきたLenovo社やTCL-Alcatel社、Coolpad社などは苦戦している。