2016年の半導体業界は、後半に大型のM&Aが目白押しだった。1年前の本コラム記事で筆者は、2016年は情報・通信・民生向けの半導体需要が低迷することや、車載・産業向けの需要が相対的に伸びることを予測していた(関連記事1)。IoTの対象が具体化すれば半導体の需要増につながると締めくくっているが、その時点での業界見通しは話題性には乏しかった。今回は、2016年に実際に起こった業界の出来事を総括しながら、2017年の動向を予測したい。

 まず、業界にとって想定外だったのが、NANDフラッシュメモリーの需要の上振れである。国内唯一のNANDフラッシュメモリーメーカーである東芝は、2015年度のメモリ事業実績が売上高8456億円、営業利益1100億円。これに対し2016年度は、同年5月の決算発表時点で売上高7466億円、営業利益244億円と大幅な減収減益を予想していた。

 ところがふたを開けて見ると、2016年度上期は売上高4045億円、営業利益501億円とほぼ前期並み。当初計画を上振れたという。前期に比べて円高というマイナス要因があったことを考えると、需要がいかに旺盛であったかが伺える。同社はSSDと中国系スマートフォンの需要増を理由に挙げているが、業界全体で見るとサーバー向けSSDの需要増が予想を上回ったことが大きかったようだ。

 韓国Samsung Electronics社や韓国SK Hynix社、米Micron Technology社といった他のNANDベンダーも、需要増を受けて設備投資計画を前倒した。この結果、半導体製造装置メーカーの業績も軒並み上振れた。例えば東京エレクトロンは、2016年度の通期売上予想を従来の7140億円から7620億円へと480億円上方修正している。

 HDD(ハードディスク装置)がSSDに置き換わる動きが加速している状況を考えると、旺盛な需要は2017年以降も続きそうだ。一方、懸念もある。中国におけるメモリー工場の建設ラッシュだ。中国は国家戦略の一環としてメモリー工場への設備投資を続けており、これらが立ち上がると2020年までにNANDフラッシュメモリーの供給過剰が起こり得る。メモリー業界にとって、中長期的には最大の懸念材料だろう。