2015年10月6日、ソニーは半導体事業を分社すると発表した(関連記事)。2016年4月1日の営業開始を目指し、半導体の研究開発や事業管理、営業などの機能を新会社に移管する。半導体以外の事業についても、順次分社化していく方針のようだ。

 半導体事業を分社した日本企業は多く存在する。2002年にNEC、2003年に日立製作所と三菱電機、2006年に三洋電機、2008年に富士通がそれぞれ分社。最近では2014年にリコー、2015年にはセイコーインスツルがやはり半導体事業の分社に踏み切った。以下では、これまでの半導体分社の事例と今回のソニーの事例を比較しながら、それぞれの背景や狙いを整理したい。

半導体はソニーの稼ぎ頭

 ソニーの2015年3月期決算をみると、全社営業利益は685億円、デバイス部門の営業利益は931億円。モバイルコミュニケーション部門が2204億円もの巨額赤字を計上したのとは対照的に、半導体を中心とするデバイス部門はエレクトロニクス部門の稼ぎ頭だ。

 筆者は本コラムで以前、「資産の軽量化、ハードウエア主体の事業形態からの脱却を目指すソニーが、ルネサス エレクトロニクス 鶴岡工場を買収するのは方針にそぐわない」ことを理由に、半導体事業は分社した方がスッキリする」と書いた。それゆえ今回の発表にも違和感はない。ようやく決断したかと思っているくらいで、新会社には攻めの姿勢を期待している。

 一般に事業を分社する場合、対外的には「経営判断の迅速化」「自立性を高める」といった表現を使い、無難な説明に終始するのが常だ。その裏の本音では、分社した新会社に対して外部からの出資を求める場合が多い。上場させたり第3者に売却したり、同業他社と統合したり、手法はいろいろあるが、親会社が株式を100%保有したままというケースは少ない。こと日本企業の半導体事業の分社では「やむを得ず連結対象から切り離す」ことを目的にする事例が多かった。