『日経エネルギーNEXT』2016年7月20日号には、コラム「消費者がつまづく素朴なギモン」の第3回として「家に届く電気は混ざっているの?」という疑問が取り上げられている。小売り電力の電力自由化が2016年4月に始まったことを受けて、せっかく再生可能エネルギーを主に使いたくて電力サービスの契約先を変更したのに、従来の電力会社の電気がそこに混ざっているのではないか、という疑問だ。

 コラムには、北海道のトドック電力の木暮明大氏の回答が掲載されている。それを読んで、私だったらどのように回答するだろうとしばらく考え込んだ。私も普段の取材や、知人との話の中で同様な質問を数回受けたことがある。電力サービスの契約先を変えたが、配電網が以前と同じままであることに驚いてこうした疑問を抱く人が少なくないようだ。

 同コラム中で木暮氏は「この質問の答えは簡単なようでいて実はすごく難しい」と述べているが、実際、正確かつ簡潔に回答するのは容易ではない。正確に回答するには、(1)電力は送配電網をどのように送られてくるか、(2)エネルギーとは何か、(3)混ざるとはどういうことか、についての理解を聞き手と共有している必要があるからだ。しかし、実際にはその説明自体がかなり難しい。

 実際、結論からいうと、私なりの回答は「粒子は全く混ざっていないが、エネルギーとしては完全に混ざっている。しかし、“人間のお約束”としては全く混ざっていない」という禅問答のようなものになってしまう。