図1 実在の装置に重ねて、仮想の部品やメーターを表示
図1 実在の装置に重ねて、仮想の部品やメーターを表示
「LiveWorx 2016」の展示会場で。アプリを入れたタブレットまたはスマートフォンで見られる
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図2 図1の状況でスマホに映った画像のキャプチャー
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「LiveWorx 2016」の展示会場で。アプリを入れたタブレットまたはスマートフォンで見られる
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 AR(Artificial Reality、拡張現実感)という言葉が、急に存在感を増やしています。日本国内で「ポケモンGO」の配信が始まったのが2016年7月22日の金曜日。ちょうどお休みを頂いていた筆者は、NHKが午前11時のニュースの冒頭で速報として配信開始を伝えるのを見ました。もっとも、元からポケモンマニアだった家人は、その40分くらい前から何やら騒ぎ始めておりました。

 残念ながら自分ではポケモンGOをやっておりませんが、もともと物語の中にしかいなかったポケモンが、現実の空間の中に出てきたのが大きな魅力になることは分かります。少なくとも元からのポケモンマニアにとっては。伊勢神宮が出した「境内では生き物は捕まえられないので、ポケモンもそっとしておいて」というコメントは、ポケモンが生き物として実在していると認めている点で、他の神社や施設のコメントと一線を画すものだったと思います。

 その、コンピューター内の情報を現実の空間と重ね合わせることによって得られるうれしさ。これがARの価値だと思います。ただ、残念ながらこれまで、そのうれしさはあまり明確に認識されてこなかったのではないかという気もしています。

 例えば、設計検討やデザイン・レビューの一環で、3D-CADのモデルが現実の風景の中でどう見えるかシミュレーションするといっても、現実の風景の写真を背景にしたCG画像をつくれば、それで事が足ります。最近はもう、ぐるぐると角度を変えながら見ることだって難しくはありません。環境マッピングやリフレクション・マッピングを施せば、臨場感は申し分ないと思います。

 工場のライン担当者向けに、作業内容の指示をめがね型ウエアラブル機器に表示させるという使い方は有効だと思いました。ただし、視線を大きく動かさずに済むメリット(大きく動かしてよければ通常のディスプレーで済みます)と、ウエアラブル機器の導入費用や装着によるわずらわしさとのバランスをどう考えるかで、多くの場合は微妙なところだろうな、という気がしたのも正直なところです。

* 筆者の担当ではありませんが(たぶん)、『日経ものづくり』の近い号でARの記事の企画があります(おそらく)。