時が経つのは早いもので、2016年度も今日で終わりです。2017年も4分の1が終わったかと思うと、恐ろしい気持ちになります。

 エネルギー業界の2016年度は、電力全面自由化を迎えた節目の年でした。昨年の今頃は、4月1日の自由化を目前に控え、テレビや新聞、雑誌がこぞって新電力の料金を紹介していました。それから1年、電力会社の切り替えは「ぼちぼち進んだ」というのが率直な感想です。

昨年4月1日の電力自由化に向けて、新電力のサービス発表ラッシュもありました
昨年4月1日の電力自由化に向けて、新電力のサービス発表ラッシュもありました

 電力・ガス取引監視等委員会が3月22日に発表した最新データによると、2016年12月末時点で新電力の契約件数の占めるシェアは約2.8%。全面自由化前が約1%だったことを考えれば、確実に増えています。販売電力量の新電力シェアは約8.7%ですので、これもかなりの伸び。販売電力量は、一般家庭が利用する低圧よりも、業務用の高圧や産業用の特別高圧の寄与が大きいと思われますが、件数のシェア増と合わせてみれば消費者も一定、動いたと言えそうです。

 ただ、この1年で電力自由化への認知度が飛躍的に高まったかというと、正直なところ疑問です。いまだに「停電が恐いから切り替えない」という声を聞くこともあります。

 電力会社を切り替えても、自宅に届く電気の質が変わるわけではありません。大手電力会社から新電力に切り替えても、一般送配電事業者(地元の大手電力会社の送配電部門)が地域の電力網を維持管理し、自宅まで電気を届けている状況に変わりはないためです。ざっくり言えば、お金の支払い先が新電力に変わるだけ。「自宅の電気」に目を向ければ、物理的な変更は皆無です。

 つまり、自宅の電気設備に故障などが起きない限り、停電するときは周囲の住宅も一斉に停電します。「隣のお家は電気がついているけれど、ウチだけが停電」という事態は起きようがないわけです。

 自由化初年度、新電力各社は「料金の安さ」「ポイントやセット割引によるお得感の演出」に注力しました。その一方で、電気事業を手がけていると当たり前に思える部分でつまずいている消費者が、依然として相当数いるのではないでしょうか。