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エディターズ・ノート

シャープは「壁」を壊して復活できるか?

  • 近岡 裕
  • 2016/02/29 05:00
  • 1/1ページ

 シャープが台湾の鴻海精密工業(Hon Hai Precision Industry社)の買収提案を受け入れました。国内大手電機メーカーの外資傘下入りは、恐らく歴史的な出来事になることでしょう。

 経済的にはそれほどの大ニュースですが、一(いち)技術系記者として気になるのは、シャープのものづくりの現場の方です。(一点だけ、経営陣がそのままという報道には違和感を覚えましたが…。)当然ですが、シャープはメーカーなのですから、優れた製品を生み出すことなしに復活はあり得ません。そのカギを握るのは、ものづくりの現場です。

 ちなみに、日経ものづくり(本誌)が言う「ものづくり」は、製造業に要する全ての工程、すなわち研究、企画、開発、設計、生産技術、生産、場合によっては販売までを取材対象としています。社内でも間違われることがままあるのですが、ものづくり=工場だけではありません。

 本誌の2004年7月号でシャープの解説記事を取材・執筆しました。当時の社長は町田勝彦氏。2003年度(2004年3月期)の営業利益率は5.4%と、当時の日本の大手メーカーとしては高い水準で、利益も2兆円を突破して急成長を遂げている最中だったのです。事実、シャープは2007年度(2008年3月期)まで売り上げを伸ばしていきました。
 
 シャープの強さの源泉は、「勝てる分野を選んで技術を融合し、ユニークな製品と市場を創造し続ける」ことにありました。当時の同社技術本部長にもインタビューし、そのための具体的な方法である「緊急プロジェクト(通称、緊プロ)」と呼ぶシャープ独自の施策について詳細を伺いました。

 緊プロは、事業部間の垣根を越えて、技術の融合を円滑に進めるための切り札でした。シャープには一貫した経営信条として「誠意と創意」がある。このうちの創意とは、他社も思わず真似したくなるような魅力的で新しい製品を作り続けようという意志です。シャープでは、この創意の上に緊プロが存在する。創意を全く無視して形だけ緊プロを取り入れても、うまくいとは限らない──。こうした興味深い話を伺うことができました。

 緊プロでは、全社横断的な技術が必要な緊急を要する開発テーマについて、各事業部や研究所から最適な人材を集めて社長直轄のプロジェクトチームを組みます。制度化したのは1977年と古いのに、その時点では30年近く効力を失っていないと聞きました。それなのに…。

 技術を融合して新技術を生み出す方法は、今でも十分通用する手法です。現在では社内だけではなく、外部の「DNA」を取り込む方法が必要かもしれませんが、複数の異なる技術を掛け合わせて新しいものを創造しようとする方向性は変わりません。

 快走していたシャープに、何が起きたのでしょうか。ヒントは、実は技術本部長への同じインタビューの中にありました。

 「創意を貫いて人に真似されるような製品を作り続ける上で障害になるものがあります。それは企業が成長を続け、売上高が1兆円を超えるような大きな組織になるにつれて顕著になってくるセクショナリズム、つまり組織の壁です」
 「1つの組織が大きくなると、より深さを追求した製品を生み出すことはできますが、売れる製品、つまり顧客に役に立ち、しかも新しい需要を創造するような製品を目指した研究開発は難しくなります」──。

 売上高1兆円を超えると生じる壁については、ソニーで活躍された故・黒木靖夫氏も取材で語っていました。シャープの緊プロは組織間の壁を壊すことにも貢献していると技術本部長から聞いたのですが、さすがの切り札も、一時売上高が3兆円を優に突破するほど巨大化したシャープの中では効力が薄れてしまったのかもしれません。

 きっと、シャープのものづくりの現場には今でも創意があると思います。この創意を大切にしつつ、今後は社内外の壁、特に鴻海精密工業とのより緊密な連携で異なるDNAを融合させる、「新生シャープのものづくり戦略」を見せてもらいたいと思います。

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