最近、自動運転をはじめとする自動車のインテリジェント化が加速しているのは読者もご存じの通りですが、実は鉄道でも同じ動きがあります。センサーネットワークの技術を活用して、鉄道システムをより「賢く」する取り組みです。もちろん鉄道は自動車に比べてコストをかけられるので、既に一部では自動車などよりも先行して高性能なセンサーネットワークが導入されています。しかし今起きているのは、自動車でこなれた高性能でかつ低コストな技術が使われ始めていることです。

 例えば、ドイツRobert Bosch社の子会社であるBosch Engineering社は、自動車の衝突防止システムに使用されているミリ波レーダーを応用して、踏切の障害物を検知するシステムや、列車の衝突を防止するシステムなどを開発しました。また同社は、Bosch社が車載で培った加速度センサーやGPSなどの技術を応用して、鉄道貨物の所在や状態をモニタリングするシステムも開発しています。

 また鉄道設備のメンテナンスでは、低コストなセンサーを大量にばらまいて車載機器の状態を高頻度でモニタリングする手法が検討されています。現在の鉄道設備は一般的に、定期点検で設備の不具合発生を未然に防ぐ「予防保全(TBM:Time Based preventive Maintenance)」と、不具合が発生した後に補修や修理をする「事後保全(BM:Breakdown Maintenance)」という2通りのメンテナンスを実施しています。このTBMとBMに加えて、「状態監視保全(CBM:Condition Based Maintenance)」と呼ばれるメンテナンス手法を新たに導入する試みです。