結局、ある時点で「これは人間にはできるが、人工知能にはできない」という状況があっても、誰かがその課題を指摘した途端に、つまり、解決したいという需要が出てきた途端に、技術的な解決策が考えられて、その技術的限界がなくなっていく傾向にある。

 この傾向は当分、続くだろう。人間の脳の再現が、人工知能の技術者が目指す大きな方向性だからだ。ただし、単なる人間の脳の複製ではなく、従来のコンピューターの強みである高速演算機能や高い拡張性、そして高いネットワーク機能を保ったままの再現である。

 人間の脳という実際に動いているお手本がある以上、その動作の再現が原理的に不可能という議論はなかなか難しい。つまり、「棲み分け論」は永遠の負け戦を迫られる。疑問は、脳の再現ができるかどうかではなく、いつできるか。例えば10年先か、30年先か50年先か、それが問題なのである。