シャープが2016年2月25日の臨時取締役会で、EMS(電子機器受託製造サービス)世界最大手、台湾Hon Hai Precision Industry社〔鴻海精密工業、通称:Foxconn(フォックスコン)〕による買収提案の受け入れを決めた。同日にはシャープが、フォックスコンを割当先とする第三者割当による新株発行で4800億円余りを調達すると表明した。これにより鴻海の出資比率は66%になるという。

 ただ、フォックスコンは同日夕、シャープから新たに出された書類を精査する必要が生じたため、買収契約を一時留保すると表明。予断を許さない状況になった。交渉期限は2月29日だが、本稿は2月26日未明に執筆しており、公開までに事態が大きく変わる可能性もある。

 そこで今回は、米紙『ウォールストリートジャーナル』が、シャープが買収提案受け入れを決めた直後にウェブ版に掲載した「フォックスコンがシャープを買収したい5つの理由」という記事を取り上げ、これを基に、筆者の見解を交えながら、鴻海側の事情や思惑を見ていくことにする。

 同紙が挙げた理由は(1)iPhone、(2)多角経営、(3)ブランド、(4)韓国Samsung Electronics社との競争、(5)シャープ・フォックスコン合作の歴史、の5点。これをひとつひとつ取り上げていこう。