ニュースではシャープや東芝の経営危機、リストラが取り沙汰されていますが、この10年の間、電機メーカーのリストラの話がない時はない、というほどでした。シャープ・東芝だけでなく、三洋電機、パイオニア、ビクター、ソニー、パナソニック、日立、NEC、富士通・・・どの企業も厳しい事業転換とリストラに見舞われ、消滅した企業もあれば事業を転換して生き残った企業もあります。

 そういったメーカーの急激な変化の中でエンジニアがいかにして生き残っていくかについて纏め、「10年後、生き残る理系の条件」(関連URL )という本を出版しました。この本の中ではエンジニアの視点から、1つの技術分野を深堀りするだけでなく複数の分野に強みを持つこと、技術を活かすための文系力を身につけること、エンジニアリングデザインなどについて触れました。

 50年、100年と長く続く大企業はしたたかなもの。変わらないと言われる日本企業でも、企業は社員をリストラして事業を転換しながら、したたかに生き残っていく。建前上は終身雇用という人事制度を維持しても、実際は企業は社員を守ってくれない、という危機感からエンジニアも「自分の身は自分で守ろう」というつもりで書きました。

 この本が出版されてから2ヶ月ほど経ちますが、思わぬところから反響がありました。当事者であるエンジニアの方と同じくらい、企業の人事部の方々からご意見を頂きました。私が企業に在籍していたのは9年近く前ですが、当時の日本企業の人事制度といえば、できるだけエンジニアを特定分野に留め、分野の専門家、生き字引として育成するものでした。

 様々な部署を転々としてジェネラリストのようになるのではなく、場合によっては同じ部署に20年、30年居ることで、その道のプロになって欲しい。ところが、そういう専門性の高い人材ほど事業が傾いて転職せざるを得ない時に、次の職探しが難しかった、という予想外の現実がありました。