二輪車以外のヘルメット

 全くの私見ですが、アライが国内外、特に国内で不動の位置を占めているといっても過言ではない、もう1つの事実があります。それは、二輪車以外にもさまざまなヘルメットを独占的に社会に提供していることです。四輪車用、ボート用、競馬用などがあります。

四輪車用

 国内の四輪車のヘルメットはアライが独占しています。四輪車の事故は二輪車に比べて重大なものになりがちです。なぜなら、ドライバーの体がマシンに固定されているので、二輪車のように危険回避のため頭の位置を大きく動かすことができず、事故時に頭部に直接、大きな加速度を受ける危険性が高いためです。国際自動車連盟(FIA、Federation Internationale de l'Automobile)のレギュレーションは二輪車より厳しいものになっており、特にアイルトン・セナ(Ayrton Senna da Silva)の死亡事故(1994年F1サンマリノ・グランプリ)以降、ヘルメットはFRPより強度があり軽いCFRP(炭素繊維強化樹脂)製に統一することになりました。

図A 四輪車用ヘルメット
図A 四輪車用ヘルメット
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モーターボートレース用

 四輪車用同様、アライのみが製造しています。ボートレースもCFRP製が主流になりつつあります。ボートが転覆すると、他のボートはその上を乗り上げて通っていくので、特に強度が必要になるからです。

 一般的にCFRP製は強度がありますが、荷重が大きくかかるとある時点でガラスのように割れてしまう特性を持っています。アライはその現象を回避するため、「マル秘」の材料を混ぜているそうです。

 選手はボートに乗る際、下から見上げる姿勢になるので、視界を確保するため窓の部分は広く造っています。また、ボートのエンジン音を聞き分けることが勝負の上で重要なので、耳穴も設けてあります。撥水性は当然高くしてあります。

図B モーターボート用ヘルメット
図B モーターボート用ヘルメット
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競馬用

 騎手が自由に選択します。海外で買ってきたヘルメットをかぶる有名騎手もいるのですが、多くの騎手がAraiをかぶっています。

図C 競馬用ヘルメット
図C 競馬用ヘルメット
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 他に、救急隊用、消防士用、高速機動隊用のヘルメットもアライが供給しています。このように多岐にわたるラインアップを持っている点も、アライの強み、特色といえるのではないでしょうか。代々の経営者たちの努力、開発にかける情熱や品質の良さにより、ヘルメット・メーカーとしての現在のような地位を築いているのだと思います。

図D 消防用ヘルメット
図D 消防用ヘルメット
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参考文献
宇治橋貞幸,「スポーツ工学講義資料」,東京工業大学.
■変更履歴
・図2の引用表記を修正しました。[2018/11/12]