“ちがいを楽しむ1週間”をキャッチフレーズにスタートした「超福祉展」。“ちがいを楽しむ”とは、社会のダイバーシティー(=多様性)を楽しみ、受け入れようという呼び掛けである。今年はダイバーシティーへの理解を深めるためのシンポジウムやトークショーなどを多彩に展開するが、例年どおり福祉を超えた技術、製品を多数展示する。ここではちょっと変わった“超福祉”なプロダクト、技術を見てみたい。

「コロンブスの卵」 大型のオムニホイール――超人スポーツ協会

超人スポーツ協会の上林功氏(左)と安藤良一氏
超人スポーツ協会の上林功氏(左)と安藤良一氏
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 毎回そのユニークな発想に基づく、突飛な技術を見せてくれる「超人スポーツ協会」が、今年も一歩進んだアイデアを披露した。それがプロトタイプ・モジュール「RAY(レイ)」だ。

 これは、一言で言えば「横にも動く車(椅子)」のためのモジュールである。全方向に移動できるオムニホイールを、大口径の車輪で実現した。横回転用の小型車輪の数が多く、重量が増すためパワーアシストを使用する。会場ではレイを搭載した車いすを展示した。 このオムニホイールの発展型は「今まで誰もやろうとしなかったもの。まさにコロンブスの卵的なモジュール」。そう語るのは超人スポーツ協会の上林功氏と安藤良一氏だ。現在、意匠登録申請中という。

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 展示したプロトタイプでは51個の小型ホイールを備える。コロンブスの卵なのは、このサイズの車輪で、なおかつ補助輪ではなく主輪(駆動輪)でオムニホイールを実現していることだ。「制御の不安を口にする研究者もいるが、実際に車いす利用者が試乗すると誰もが不安なく自在に操作している」(安藤氏)という。

 もともとは、超人スポーツの競技「Carry Otto(キャリオット)」で使用するための車いすとして開発を目指した。キャリオットは現代版「戦車競争(チャリオット)」ともいうべきスポーツで、小型モーターデバイスを手綱で操りゴールを競う。しかし、「(前部で使う)モーターデバイスで曲がろうとしても、(乗っている)車いすは直進してしまう。手綱の動きに合わせて自由に動く車を作れないかという発想で開発をスタートした」(上林氏)。

 実際に試乗してみると、車いすとは思えないニョロニョロとした柔らかい自在な動きが可能になる。超福祉だけでなく、ロボット工学の領域からも注目を集めている。多領域での発展的利用が期待できそうなモジュールだ。