今回のタイトルは、以前、日経ビジネスオンラインの「キーパーソンに聞く」というコラムに掲載された筆者のインタビュー記事のタイトルである。あらためて言うまでもないが、5Sとは「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の5つのSのこと。実に、簡潔・適切に表現されたタイトルで、“さすがに日経ビジネス”と感じたのだが、インタビュー記事が掲載されて以降、このテーマで講演を依頼されることも多いので、今回はなぜ5Sなのかについて少しだけ解説したい。

経営の基本はキャッシュフロー

 再三申し上げているが、経営を進める上で大切なのは「キャッシュフロー」である。お金が無くなれば支払いができず、倒産につながる。経営は出資者から預かったお金や借入金などで調達したお金を、事業に必要な資産に換えて事業を行ない、その事業で新たなお金を生み出し、それをさらなる成長に向けて投資をして事業を発展させていく。それこそが経営のサイクルだからだ。

お金を寝かせていないか

 もともと、いかに少ない元手でお金をどうやって増やすかを考えるのが商売人だ。従って、真の商売人であれば、在庫にしてお金を何カ月も滞留させるようなことはしない。設備も購入したらすぐにフル稼働させてお金を生み出すようにするはずだ。

 ところが、現場を見てみるとどうだろうか。在庫が何カ月も滞留していたり、ほとんど動いていない設備や治具があったりしないだろうか。これらはお金が物になって寝ている状態だ。貸借対照表(バランスシート:B/S)の借方(B/Sの左側)は、調達したお金を事業に必要な資産に換えた結果を表しているが、本当にお金を生み出すべくそれら資産を使えているだろうか。

 しかも、調達したお金にはコストがかかっている。借入れたお金には金利がかかるし、自己資本といえども出資者には配当を支払わなくてはならない。これらを「資本コスト」と呼ぶが、このようにコストをかけて調達した貴重なお金を、長期の滞留在庫や遊休設備にしておくようでは、経営にならないのは明らか。そこで、大切なのが5Sのうちの2つ「整理」「整頓」なのである。