―― 「白猫プロジェクト」のテレビCMに元Jリーガーが学生服姿で出てくるなど、Jリーグに一気に近づいた、知名度が広がったと感じました。

石渡 私が担当する部門とは違うので、意図してCMを制作したのかどうかは正直なところ分かりません。ただ、偶然やご縁というのはうまくいく流れの中で結構起きることかなと思います。CMを見ていただく人の何かが変わっていくきっかけにはなったかなと思いますね。

―― 私もゲームをプレーしてみましたが、大変面白いですね。実際にJリーグで活躍する選手の名前と顔がそのまま使われています。やはり、選手の実名や肖像が使えることは、スポンサーになるメリットの一つなのでしょうか。

石渡 亮介(いしわたり・りょうすけ)。1972年4月生まれ。神奈川県出身。1996年3月慶應義塾大学卒業後、マーケティング企業でのコンサルティング業務などに従事。2006年より東京ヤクルトスワローズの改革プロジェクトで観客動員や球団収益の拡大に貢献。その後、IT企業を経て2010年9月にコロプラ入社。リアル連携事業や「プロ野球PRIDE」に参画。2013年10月にサービス統括本部長、2014年12月に取締役に就任。
石渡 亮介(いしわたり・りょうすけ)。1972年4月生まれ。神奈川県出身。1996年3月慶應義塾大学卒業後、マーケティング企業でのコンサルティング業務などに従事。2006年より東京ヤクルトスワローズの改革プロジェクトで観客動員や球団収益の拡大に貢献。その後、IT企業を経て2010年9月にコロプラ入社。リアル連携事業や「プロ野球PRIDE」に参画。2013年10月にサービス統括本部長、2014年12月に取締役に就任。
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石渡 スポンサーシップのきっかけがゲーム制作だったのは間違いないのですが、実際にJリーグとお話をするとコロプラへの期待はゲームだけではないと感じました。話をする中で、いろいろな広がりを一緒につくっていきたいという思いが、村井チェアマン(村井満・Jリーグチェアマン)も含めて、どんどん出てきたんですよ。

 例えば、ゲームのサービスを運営していく中では、ユーザーの行動などさまざまなデータが蓄積されていきます。そのビックデータを分析して、より良いサービスにつなげていく取り組みは、コロプラが得意で長けているところです。「データ分析でJリーグのクラブをはじめとするリアルな日本のサッカーチームが強くなるような仕組みができたりしませんかね。できたら面白いですね」といった話も出ました。

 コロプラは、もともと「位置ゲー」(位置情報ゲーム)を提供してきた会社です。なので、Jリーグチームのサポーターがスタジアム観戦に行く時にも、ゲームと連動した面白いサービスを提供できるかもしれません。Jリーグとコロプラが力を合わせれば、ただのゲームに留まらない、さまざまなサービスを生み出せるのではないかという話で盛り上がりました。

―― 確かに、アプリやスマホをうまく使えば、いろいろとサービスは広がりそうですよね。

石渡 スポンサーシップが単なるゲームの世界だけでは閉じないということをコロプラは考えていましたし、Jリーグ側も同じようなところのイメージを膨らませていただいていたので、じゃあ、一緒にやると面白そうですね、と。そういう話をする中で、スポンサーになる話は急にドーンと話が進みました。

―― その時は、村井チェアマンと直接話をしたんですか。

石渡 実際に先方のご担当者を交えてチェアマンと同席させていただいたときに、ご縁というか、マッチ度の高さというか、そういうことがあるのかなと思いました。

―― 具体的にゲーム以外でJリーグと進んでいるプランはありますか。

石渡 詳しくは言えませんが、コロプラのテクノロジー関連のチームが、リアルなサッカーのプレーデータの分析を始めています。どんなことが言えるか、どんなことが役に立つのかを考えています。ワールドカップで優勝したドイツ代表も同様のことをやっていたと聞くのでスタートを切り始めた感じです。

―― サッカーファンにCMが話題になったところで、「コロプラってJリーグのゲームもあるじゃないか」という流れになってきたのは面白い展開です。そして、単にお金を出すだけ、広告で露出するだけが目的だった従来型のスポンサーシップから一歩進み、テクノロジーとJリーグをどう関連づけていくのかが、まさに現在進行形の話ということなんですね。テクノロジー関連のチームは、サッカー分析専門なんですか。

石渡 社内にデータサイエンスチームというのがあります。ビッグデータを扱い、それを分析する専門のチームです。そこがサッカーのプレー分析を始めています。

 このチームは日頃からゲーム内でのアクティビティ、ユーザーの行動について分析しています。例えば、ゲーム運営側のプロモーションに対するユーザーの反応などをフィードバックし、それをゲーム運営チームがマーケティングに生かすような取り組みです。このビッグデータ分析で培った技術を、リアルなサッカーのチーム力や選手のプレーの向上につなげようというわけです。

―― そのチームは、選手からもデータを取ったりするんですか。

石渡 Jリーグが集めているデータを提供してもらい、映像も見ながらという感じでやっています。具体的には、Jリーグのオフィシャルデータサプライヤーとして試合中の選手の動きなどを蓄積してきたデータスタジアムと共同で研究開発を進めています。

(次回に続く)

上野 直彦(うえの・なおひこ)/スポーツライター
上野 直彦(うえの・なおひこ)/スポーツライター 兵庫県生まれ。ロンドン在住の時にサッカーのプレミアリーグ化に直面しスポーツビジネスの記事を書く。女子サッカーやJリーグを長期取材している。

『Number』『AERA』『ZONE』『VOICE』などで執筆。テレビ・ラジオ番組にも出演。経済アプリ・NewsPicksでの“ビジネスはJリーグを救えるか?”が好評連載中。

Twitterアカウントは @Nao_Ueno