―― いただいた名刺によると、コカ・コーラでのオリバーさんの肩書きは「東京2020オリンピック ゼネラルマネジャー」です。もうチームは立ち上がっているのですか。
高橋 今は、まだありません*1。2017年4月に第1号の担当者が入ってくる予定になっています。現在のプランでは2017年に5人、2018年に12人、2019年に50人前後のチームになる予定です。さらに2020年の五輪期間中は、会場でのオペレーション担当者を入れると総勢1200人くらいがプロジェクトに携わることになるでしょう。
常に新しく斬新なアイデアを出し続ける
―― コカ・コーラ社とはFIFA時代からの長い付き合いで、今回は内部でスポーツマーケティングに携わることになったわけですよね。コカ・コーラ社はスポーツマーケティングのパイオニアですし、「コカ・コーラ社の他にスポーツマーケティングはない」という言葉も聞きます。客観的に見たコカ・コーラ社のマーケティングの強みは何でしょうか。
高橋 常に新しく斬新なアイデアを出し続けることだと思います。そして、それをコカ・コーラ社1社でやろうとしない。いわゆる、ライツホルダー、IOC(国際オリンピック委員会)しかり、FIFAしかりですが、互いにウィン・ウィンの関係を築いていく発想でプロジェクトを進めますね。だから、相手はコカ・コーラの提案に応じようと考えるし、「じゃあ、やろうか」という流れになりやすい。
―― ライツホルダーから得たスポンサーシップの権利を、上手にアクティベーション*2に持っていくということですね。そのアクティベーションについて、オリバーさんから「日本の企業は非常に弱い」という話を以前聞きました。
高橋 多くの皆さんはスポンサーシップの権利を獲得して満足してしまっているように思います。権利を買うために使ったフィーと同じくらいの額を投資していかないと、コンシューマーには訴求できません。コカ・コーラ社が面白いのは、オリンピックやW杯、欧州選手権など、どの大会でも、アセットを一番うまく有効活用している。これはコカ・コーラ社以外にはないでしょうね。
―― 日本企業は、どうして権利獲得で満足してしまうのでしょうか。
高橋 ひと言で言ってしまえば、不慣れなのでしょう。広告会社に任せっきりだったりするケースが多いですね。これまでは、自分たちで考えて、自分たちでアクティベーションに取り組んでこなかったのではないでしょうか。
―― 東京五輪は新国立競技場や大会ロゴなど準備段階で問題が噴出していて、ネガティブな報道も多い。ただ、個人的には、かなり面白い大会になると見ています。
高橋 おっしゃる通りです。僕も、面白くなると思っています。
問題といっても、それほど大きなものだと僕は感じていません。何度も五輪やW杯を仕事で経験しましたが、大きなスポーツイベントは、それぞれの開催国で課題や難題が必ず出てきます。リオデジャネイロ五輪もロンドン五輪もそうでした。当然、東京にも出てくるわけですが、東京で起きている問題は過去の大会に比べたら大きなものではないでしょう。