東京オリンピック・パラリンピック(オリパラ)は、「東京だけの大会」ではない。2020年に向けて、東京を中心に日本を覆うであろう熱気をいかに地方で取り込むか。地方自治体にとって、2020年まではもちろんのこと、それ以降を占う大きな挑戦になるだろう。

 この命題に向けて、多くの地方自治体が手を携えて連合を組んだ。2015年春に設立された「2020年東京オリンピック・パラリンピックを活用した地域活性化推進首長連合」がそれである。大きな目標は、東京オリパラを契機とした地域活性化と、産業・観光振興だ。オリパラを単なるスポーツの祭典に終わらせず、地方の活性化と魅力の発信につなげていくことを目指している。

 首長連合は既に2015年の6月と11月に2回の総会を開催し、同年12月時点で北は北海道から南は沖縄まで約350の市町村が参加を表明した。既に複数のプロジェクトが具体的に動き始めている。

世界の耳目が日本に集まるタイミングを逃すことなく

「首長連合の長い名称にすべてが集約されている。東京オリパラを一つのキッカケに、もっと悪い言い方をすれば『道具』として、世界の耳目が日本に集まるタイミングを逃すことなく、地方も恩恵・果実を得ていこうと思っている」

 首長連合設立の音頭を取り、連合の会長を務める新潟県三条市の國定勇人市長は、2016年2月に東京で開催された「第2回 レガシー共創フォーラム」(主催:プラチナ社会研究会、レガシー共創協議会)で意気込みを語った。

レガシー共創フォーラムで講演する三条市の國定市長
レガシー共創フォーラムで講演する三条市の國定市長

 連合設立の背景にあるのは、これから国内でさらに拡大が予想されるインバウンド需要である。首長連合によれば、1992年のバルセロナ五輪以降の過去5大会を見ると、各開催国では軒並みインバウンド需要が長期にわたって喚起される傾向があった。大会の会期中だけの瞬間風速ではなく、開催決定後から外国人観光客が増え、大会後にも勢いが続く。

 「もちろん、ほかにもさまざまな要因があることは承知しているが、東京大会の開催決定の後、年間の訪日外国人は2000万人に迫る勢いにある。この動きは、今年のリオデジャネイロ大会の後に加速する傾向はあっても、減速することはないだろう」と、國定市長は見る。

 インバウンド需要の拡大に期待が高まる理由は、2000万人という数字だけではない。その周辺にいるであろう「日本に関心を持つ外国人」の増加だ。日本を知って、日本に関心を持ち、日本に行ってみたいと思っている海外の人々は、もっと多いはず。そうした人々に日本の地方の魅力を伝えていく。地方自治体が協力することで、地方の注目度を高め、大きなうねりにしていきたい。首長連合が目指すゴールは、そこにある。

 ただ、東京大会の招致が成功した後、自治体首長の間では「自分たちの街には、事実上あまり関係がない」と、むしろ開催を後ろ向きに捉える声が少なくなかったのだという。