競技会場間の移動は、平昌オリンピック(五輪)で苦痛だったことの1つだ。

図1 寒空の下、長蛇の列のバスに並ぶのは苦痛だった(写真:宮田誠、以下同)
図1 寒空の下、長蛇の列のバスに並ぶのは苦痛だった(写真:宮田誠、以下同)
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 リオデジャネイロ五輪の時、非常に役に立った「Uber」は、韓国では違法のため使うことができない。平昌五輪の競技会場間の移動手段は、一般の観戦客はKTX(新幹線)と無料シャトルバス、タクシーの3つに限定された(図1)。当然、会場周辺の交通規制は厳しく、関係車両以外は近寄ることができない。

 例えば、山岳エリアの平昌でノルディック複合を観て、その後、沿岸エリアの江陵(カンヌン)でアイスホッケー、そして女子スピードスケートを観るという過密スケジュールの1日があったが、移動は下記の通りとなった。

 ソウル→(KTX:約2時間)→珍富駅→(バス:20分+徒歩:20分)→平昌ジャンプ競技場→(徒歩:20分+バス:20分)→珍富駅(KTX:15分)→江陵駅→(徒歩:20〜30分)→アイスホッケー場/スピードスケート場→(徒歩:20〜30分)→(KTX:約1時間半)→ソウル

 移動だけで約6時間も使った計算となる。

 しかし、会期中に知人の国際オリンピック委員会(IOC)のメンバーと話す機会があり、彼女によると冬季五輪としては他大会と比較してコンパクトにまとめられている、と強調していた。

図2 五輪スポンサーを列記した看板
図2 五輪スポンサーを列記した看板
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 ところが、著者の地元で開催された1998年の長野五輪と比較すると、そうでもないというのが正直な感想だ。我々は日本のコンパクトさに慣れてしまっていることを痛感する。

 これから平昌パラリンピック(開催は3月8日から3月18日まで)に行かれる方は、観たい競技に狙いを絞り、十分過ぎるほどの余裕を持って移動することをお勧めする。

VR/AR使ったソリューション続々

 さて、五輪は高額なスポンサー料を支払っている各企業の最高のショーケーシング(PR)の場でもある。オリンピックパーク内には、各社のPRブースが建ち並んでいた(図2)。

 目立っていたのは、最高位のワールドワイドパートナー(五輪全体のグローバルスポンサー)よりも、ローカルスポンサー(平昌大会のスポンサー)の各ブースだ。お膝元のサムスン電子はワールドワイドパートナーでもあるが、同社や現代自動車、韓国代表チーム、さらには大会ボランティアの公式ウェアサプライヤーにもなっているTHE NORTH FACEは特に存在感があった(図3)。

図3 The North FaceのPRブース
図3 The North FaceのPRブース
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 特にサムスン電子は、ガラス張りの巨大な建物の中に各競技のVR(仮想現実)システムを配置。スノーボード、アルペンスキー、クロスカントリー、スケルトンなど10種類近くの競技が疑似体験できるようになっており、長蛇の列ができていた。建物内には、同社製のスマートフォン(スマホ)やタブレットの最新機種が所狭しと並んでいた。(図4)

図4 サムスン電子は、ガラス張りの巨大な建物(写真奥)の中にVR(仮想現実)を使った各競技のシミュレーションを展示
図4 サムスン電子は、ガラス張りの巨大な建物(写真奥)の中にVR(仮想現実)を使った各競技のシミュレーションを展示
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 サムスン電子のショーケーシングに限らず、今回は大会全体を通してVRやAR(拡張現実)系のシステムには特に力が入っているという印象を受けた(図5、図6)。指定の場所でスマホをかざすと特殊な画像や映像を見ることができるなど、パーク内にも様々な仕掛けがあった。品質レベルに関しては「まだまだ発展途上」という感は否めないが、この分野は今後1~2年もすれば全く変わったものとなるだろう。

図5 サムスン電子のブースに展示されたVRを使ったスノーボードの体験システム
図5 サムスン電子のブースに展示されたVRを使ったスノーボードの体験システム
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図6 VRを使ったスケルトンの体験システム。こちらもサムスン電子のブースに展示
図6 VRを使ったスケルトンの体験システム。こちらもサムスン電子のブースに展示
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 韓国ナショナルチームの公式ウェアや、ボランティアのユニフォームなどで存在感を放っていたThe North Faceは、パタゴニアと並ぶ北米の有名アウトドアブランドだが、韓国国内で展開しているのは日本のゴールドウインと韓国企業との合弁会社だ。商品企画は現地に委ねられているため、特にアパレル系は北米や日本ではお目にかかれないものばかりだった。