金4個、銀5個、銅4個。
日本人選手の冬季五輪における過去最多のメダル獲得数で盛り上がった平昌五輪(2018年2月8日~25日)。2016年夏のリオデジャネイロ五輪に続いて、チームのサポートや視察で現地に滞在したユーフォリア代表取締役の宮田 誠氏に、テレビがあまり伝えなかった生の現地レポートを3回に渡ってお届けしていただく。
時差がゼロの日本と平昌
韓国はとても近い。羽田からソウルの金浦国際空港までのフライトは行きが2時間半、帰りは2時間。沖縄に行くほどの短時間でアクセスできる。移動に24時間かかった2年前のリオデジャネイロと比べると飛躍的に身体の負担は少ない。
あまり知られてはいないが、平昌五輪開幕の1週間前という直前期に、長野県白馬村がノルディック複合のW杯を招致・開催し、多くの国が参加した。日本と平昌は時差がないため、コンディション調整のためにこの大会を利用した強豪国(欧州)のチームは多い。ノルディック複合だけでなく、スキー・スノーボードなど様々な競技の外国人選手が日本で調整を行った(図1)。
日本の長野・新潟・北海道などのエリアと、平昌の地は時差、気温、そして食事などのコンディション等において近い部分が多くある。夏と冬とで違いはあるが、地球の裏側で行われた前回のリオ五輪とは異なる地理的要因は、日本チームにとっては有利に働いた部分が少なからずあるだろう。
やはり寒かった平昌
平昌五輪では、その寒さが連日報道されていたが、現地はやはり寒かった。しかしながら、筆者は長野出身でスキーの大会運営などで慣れていたこともあってか、しっかりとした服装をしていればしのげない寒さではなかった。
ただ、競技によっては会場が離れた場所に位置しているため、各所によって気温差が大きく、服装による温度調整はなかなか難しかった。
競技会場は大きく分けて2つあった。1つは「Mountain Cluster(山岳エリア)」と呼ばれる平昌(ピョンチャン)エリア、もう1つが「Coastal Cluster(沿岸エリア)」と呼ばれる江陵(カンヌン)エリアだ。
スキー・スノーボード・ジャンプ・ノルディック複合・ボブスレーなどが行われたのが山岳エリアの平昌、フィギュアスケート・スピードスケート・アイスホッケー・カーリングなどが行われたのが沿岸エリアの江陵となる。山と海、両エリアの気温差は体感で5℃から最大10℃程度はあるだろう。
今回は、冬季五輪大会には珍しい、2つのエリアにオリンピックパークと呼ばれるメイン会場があった。競技会場・ライブ会場(パブリックビューイング会場)・オフィシャルグッズショップ・レストランそしてスポンサーのショーケーシング(PRブース)が並ぶ(図2、図3)。
今回の五輪の名前は「平昌オリンピック・パラリンピック」だが、実はオリンピックパークは江陵エリアの方が倍以上の規模を有し、平昌エリアのものはあまり大きくない。1998年の長野オリンピックに例えると、平昌エリアが白馬・志賀高原などの山岳エリア、江陵エリアが長野市周辺というイメージである。 開会式会場やメダル授与式は、平昌エリアで行われた。
平昌エリアには、強風で話題に上ったジャンプ競技場があったが、この会場の使い方がとてもユニークだった。
今大会から新種目として採用されたスノーボード・ビッグエアのジャンプ台は、スキージャンプ台の向かい側に仮設で配置された。つまり、スキーとスノーボードは異なる両サイドからジャンプで⾶び出した後に斜面に着地し、同じ場所(ブレーキングゾーン)で減速して止まる。そのブレーキングゾーンは、夏場にはサッカー場として利⽤されている(図4、図5)。
観客席としてスタンドが常設されているが、スキージャンプとスノーボード・ビッグエアで共用され、さらに夏はサッカーで使われるという“一石三鳥”の試みだった。