連載主旨
 近ごろの日本はイノベーション流行りである。イノベーションが名称に含まれる組織、プロジェクト、会合が数限りなく誕生している。

 ところがイノベーションに関する議論は、かみ合わないことが多い。人によってイノベーションの定義やイメージがばらばらだからである。

 そもそも、イノベーションとは何か。再度、考え直してみよう。元・日経エレクトロニクス編集長で技術ジャーナリストの西村吉雄氏が、シュムペーターの原義に遡り、イノベーションの本質を解き明かしていく。

――この連載は、武田計測先端知財団が2016~2017年に開催した武田セミナーにおける私のシリーズ講演『イノベーション再考』に基づいている。日経テクノロジー・オンラインへの掲載を許可された同財団に深謝する――筆者
西村 吉雄(にしむら・よしお)
技術ジャーナリスト
西村 吉雄(にしむら・よしお) 1942年生まれ。1971年、東京工業大学大学院博士課程修了、工学博士。東京工業大学大学院に在学中の1967~68年、仏モンペリエ大学固体電子工学研究センターに留学。この間、マイクロ波半導体デバイスや半導体レーザーの研究に従事。1971年、日経マグロウヒル社(現在の日経BP社)入社。1979~1990年、『日経エレクトロニクス』編集長。その後、同社で、発行人、調査・開発局長、編集委員などを務める。2002年、東京大学大学院工学系研究科教授。2003年に同大学を定年退官後、東京工業大学監事、早稲田大学大学院政治学研究科客員教授などを歴任。現在はフリーランスの技術ジャーナリスト。著書に『硅石器時代の技術と文明』『半導体産業のゆくえ』『産学連携』『情報産業論』『科学技術ジャーナリズムはどう実践されるか』『FUKUSHIMAレポート』『電子情報通信と産業』『電子立国は、なぜ凋落したか』など。