「決済手数料ゼロ円」

 これまで「お金」といえば、円やドルなど各国政府が発行する「通貨」を指すのが常識でした。でも例えば、米Amazon.com社の「Amazon ポイント」を想像してみて下さい。Amazon社は世の中のあらゆるものを商品として扱っていますので、Amazonポイントがあれば大抵のものが買うことができます。特に北米では、Amazon社を通じて日用品はもちろん、生鮮食品や食事まで購入することができます。今や現金とデジタルデータに大差がなくなっているのです。

 通貨を発行するためには紙幣であれ硬貨であれ、相応のコストが掛かります。送金する際には、例えば銀行であれば紙ベースでの手続きや、帳簿の書き換え・チェック、ATMやシステムの開発・運用など多額の費用が必要です。

 これに対し、ブロックチェーンは書類やATMなどの専用機が不要になる上に、インターネットをそのまま使うので、インフラコストも掛かりません。システムの性質上、計算ミスもないので、人間による管理やチェックも必要なくなります。ブロックチェーンでは「決済手数料ゼロ円」が当たり前になるのです。

 手数料ゼロ円なので、1円単位どころか、現実には存在しない0.001円単位でも課金・流通させることも可能になりました。

 例えば、「Facebook」のアクティブユーザー数は20億人(2017年6月)と発表されています。仮に将来「1閲覧当たり0.003円」などと有料化されて、年間100円〜200円程度課金されるようになっても、ほとんどの人は気にせずに使い続けることでしょう。しかし、Facebookとしては、1ユーザー当たり年間100円を得られれば、年間2000億円もの増収になります。金額は細かくても、世界中から手数料をかき集めることが可能になれば、全体では莫大な利益がもたらされるというわけです。

 電子決済の広がりはネット上だけではありません。最近中国では、「支付宝(Alipay)」や「微信支付(WeChat pay)」など、デジタルマネーの利用が急速に進んでいます。上海では電子決済率が実に9割を超えるそうです。釣り銭のやりとりが要らず便利ということに加えて、デジタルマネーなら偽札かどうかを心配する必要がなく、利用者も店も安心だからです。

 政府にとっても、マネーのデジタル化は商取引が活性化するだけではなく、お金の流れを「見える化」することで課税逃れを防ぐことにもつながります。中国に限らず、各国はマネーのデジタル化を積極的に推進するでしょう。それに伴い、ネットだけでなくリアルでも、細かい金額で課金される場面が増えると思います。

 2017年10月、米Goldman Sachs社のCEOは、Bitcoinについて「まだ結論は出ていない」としているものの、「紙幣が金に取って代わったときも人々は懐疑的だった」と「Twitter」でコメントしています。

 今、ブロードバンドが世界全体に急速に広がりつつあります。それは数十億人単位で世界中の人々が「つながる」ということ。そして、さまざまなデジタルサービスを利用できるようになることを意味します。その最たるものが「お金」です。私たちは今、お金がデジタルに変わる歴史的な瞬間を目撃している。私はそう考えています。