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 日本政府は農協トップである「全国農業協同組合中央会」(JA全中)を2019年3月までに一般社団法人へと転換する方針を決定しました。これを皮切りに、農業改革が本格化しています。この歴史的な変化は今後どこに向かうのでしょうか?

 私は著書「未来予測」において、農業はこれから「食料バイオサービス産業」へ生まれ変わると予測しています。農業は「超成長産業」であり、ビジネスとしても魅力あるものになっていくでしょう。

 「食料バイオサービス産業」には、農業だけではなく、漁業や畜産、さらには微生物を扱う「バイオ分野」なども含まれています。これらの業界は「生命の力を利用し、有用な有機物を工業的に生産する」という点で共通しています。今後、これらは業界の垣根を超え、「複合ビジネス化」が進んでいくと私は考えています。

 今や農作物は食料だけではなく、再生可能なエネルギーや工業原料としても注目されています。つまり、これからの農業が作るものは食料だけではないということです。

 もう1つ例を挙げると、欧州ではドイツだけでもバイオマス発電のプラントが7000カ所以上あるそうです。その大半は農業や畜産業者の所有であり、バイオマス発電との兼業は半ば常識になっています。

 近年、欧米では「アクアポニクス」という概念が注目を集めています。これは植物工場と陸上養殖をセットで運営する、いわば「農業+漁業」の複合ビジネスです。

 魚を養殖すると「糞尿」で水が汚れます。しかし、植物にとってこれらは「肥料」であり、養分として吸収することで水も浄化されます。魚が排出する「二酸化炭素」も植物にとっては光合成の元であり、その結果、再び「酸素」を得られます。

 こうした循環は、自然環境の中ではごく当たり前に行われていることです。植物工場や陸上養殖は「工場」であり、基本的にはどこでも設置できます。ならば一体運営した方が自然の摂理にもかない、より効率的に生産できるというわけです。

 これまで農業や漁業、畜産は基本的に「家業」でした。しかし、「複合ビジネス化」のためには設備投資が不可欠です。いろいろな専門家が必要であり、組織的な運営が求められます。でも、それを「家業」でやっていくには限界があります。従って、「食料バイオサービス産業」は、「法人経営」が主体になっていくことでしょう。

 設備投資や研究開発が進むということは、農業が「ホワイトカラー」化するということでもあります。

 農業はこれまで「3K(汚い、きつい、危険)」の典型であり、「ブルーカラー」の象徴と捉えられてきました。しかし、日本の農業における価値は、腰をかがめて水や農薬をまいたり、草取りをしたりする「肉体労働」の部分ではありません。真に価値は、おいしい果物や野菜を作るノウハウです。

 特に日本のトップクラスの果物は、「農芸品」とも言うべきものであり、世界に類を見ない非常に価値のあるものです。ところが、農家は個人経営であり、その多くがその価値に気付いていないだけなのです。