「本業さえきちんとこなしていれば、ウチは10年後も大丈夫」。最近はこう言い切れる企業はなくなりつつあります。多くの会社が次世代の柱になるような新事業を創ろうと必死です。その一方で、経営者からは「社員から新しいビジネスが出てこない」という嘆きがよく聞こえてきます。
大企業の場合は資金も技術も信用もあり、優秀な学校を出た優秀な人材が多く集まっているはずです。それなのに、なぜ新しいビジネスがなかなか出てこないのでしょうか? 逆にベンチャー企業は経営資源が十分ではないのに、なぜ新しいビジネスを創れるのでしょうか?
大企業が行う新規事業開発の議論を観察していて驚くのは、「新ビジネス=新しい『モノ』や『仕組み』を考えること」と勘違いしている人が多いことです。
改めてビジネスとは何でしょうか? 一言で言えば「お金を頂く」こと。1円でもお金が動いたら、それはビジネスです。モノであれ、サービスであれ、「お金を出してでも欲しい!」と思ってもらえる何かを創ることがビジネス。「モノ」や「サービス」の提供は手段であり、目的ではありません。こんなことは本来言うまでもないことです。それなのに、実際に企画会議の参加者に「この商品を欲しい人、いますか?」と尋ねても、誰も手を挙げないことは珍しくありません。モノやサービスを作ることが目的化しているのです。
こうした「サラリーマン」的な仕事で出来たものに対し、お客様はお金を出してまで「欲しい!」と思うでしょうか?
繰り返しますが、ビジネスとは「お金を頂く」こと。お金を払ってくれるのはお客様であり、お客様は社外にいます。いくら社内で議論を重ねても、それはいわば「準備運動」のようなものであり、前には一歩も進んでいません。ビジネスは考えているだけではダメ。具体的に動かなければ、何もやっていないことと同じです。