AI活用で何が変わるのか…

武藤 具体的なAIの取り組みの内容とはどのようなものでしょうか。

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永井 現在のコンピュータは日本語の一つの文章は読めても、複雑な文章の文脈を理解することはできません。そこで日本中で年間数万例は報告されている症例報告集の文章を人力で構造化し、これをもとにAIを開発して診断支援システムを作るプロジェクトを進めています。

武藤 データやAIを医療に活用することで何が変わるとお考えですか。

永井 AIは数式に基づいて推論します。内科学会では私が理事長のときに数万例の症例報告をデータベース化して(「症例くん」)、検索できるようにしました。これはかなり有用なツールですが、無関係な情報もたくさんでてきます。そこでAIを使って、症候から病態を推論する仕組みを作っています。しかし症例の文脈の見方やまとめ方は、個人によって大きく異なります。しかし世代を超えた経験を標準化してデータベース化しておくことで、経験の浅い医師の参考になると思います。

 AIは大きな見落としの防止にはなると思います。しかし、AIが実用化されても万能ではありません。これまで同様、医師はしっかりと症例を考察し、AIの提示する判断も含めて総合的に判断することが大事です。